役員退職金を打ち切り支給したときに役員等勤続年数が5年以下に該当するかどうかについて

特定役員に支給する退職金

退職所得の金額は、その年中に支払を受ける退職手当等の収入金額から、その者の勤続年数に応じて計算した退職所得控除額を控除した残額の2分の1に相当する金額とされています。

これは、退職手当等が、長期間の勤務に対する一括後払いという性質を有していることや、退職者の退職後の生計を維持するための原資となっている性質から、担税力を考慮して、課税上一定の配慮(退職所得控除額控除後の残高の2分の1課税)が行われているのであります。

ところが、特定役員に支給する退職金については、この「残額の2分の1」の措置がありません。

 

特定役員等とは

特定役員等とは、役員等勤続年数が5年以下である者をいいます。

なお、役員等とは、法人に合っては、次に掲げる人をいいます。

  • 取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事、清算人や法人の経営に従事している者で一定の者

 

※役員等勤続年数とは、役員等に支払われる退職手当等の勤続期間のうち、役員等として勤務した期間の年数(1年未満の端数がある場合には、その端数を1年に切り上げたもの)をいいます。

したがって、役員等として勤務した期間が4年11ヶ月までである場合は、役員等勤続年数が5年以下となることから特定役員等に該当しますが、

役員等として勤務した期間が5年1ヶ月以上の場合は役員等勤続年数が6年以上となることから特定役員等には該当しないこととなります。

 

分掌変更等により役員退職金を打ち切り支給したとき

たとえば、常勤役員が非常勤役員に分掌変更された場合であるとか、取締役が監査役に分掌変更された場合に、退職金を打ち切り支給していると、

分掌変更後の役員等勤続年数が5年以下であるかどうかの判定をどのようにすればい良いのかが問題となります。

あくまでも役員としての勤続年数を通算して考えるのか、それとも分掌変更により打ち切り支給した前後で別々で考え分掌変更後のみの期間で判定するのかによって、退職所得に金額が大きく変ってくることがありえます。

 

 

打ち切り支給をすれば打ち切り支給後のみの期間で判定

所得税基本通達では、引き続き勤務する役員に対し退職手当等として一時に支払われるもののうち、たとえば役員の分掌変更等により、常勤役員が非常勤役員(代表権を有する者等を除く。)になったことなどでその職務の内容等が激変した者に対し、その分掌変更等の前における役員であった勤続期間に係る退職手当等が支払われた場合(打ち切り支給がされた場合)で、その後に支払われる退職手当等の計算上、分掌変更等の前に支払われる退職手当等の勤続期間を一切加味しない条件の下に支払われるものは、それを退職手当等とするとされています。

 

したがって、役員の分掌変更により打ち切り支給をしないで最後に役員を退任する時点で退職手当等が支払われる場合には、役員としての期間を通算して役員等勤続年数が5年以下であるかどうかを判断することになりますが、

役員の分掌変更により打ち切り支給をした場合には、分掌変更後の退職手当等は、打ち切り支給の計算の基礎となった勤続期間は一切加味しない条件のもとに支払われるものと考えられ、打ち切り支給後の勤続期間だけで役員等勤続年数が5年以下であるかどうかの判定をすることとなります。

 

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※この記事は、作成時点の法令や経験をもとに概要を記載したもので、記載内容に相違が生じる可能性があります。

また、記事中の特に意見部分については記載者の見解ですので、実際の適用においては必ず個別具体的な内容をお近くの税理士や税務署などにご確認くださいますようお願い申し上げます。