自己宛の為替手形かぁ。

先日、お客様から、

この手形なんでしょうか?

どうすればいいのでしょうか?

という質問がありました。

 

それは、「為替手形」だったのですが、

久しぶりに見ましたね。

しかも、「自己宛の為替手形」。

 

 

手形で多く流通しているのは、「約束手形」というものです。

 

「約束手形」だと、

手形の「振出人」から、

「名宛人(受取人)」に対して、

いつ(支払期日)、

いくら(金額)払う

みたいなことが記載されていて、

 

手形を受け取った人(名宛人)は、

その手形を自分の取引銀行に取立依頼に出しておけば、

通常は支払期日に取引口座に入金されるものとなっています。

 

まあ、特にわかりにくいこともなく

一般的ですよね。

 

 

一方、「為替手形」には、

もちろん、

「振出人」も「受取人」もいますが、

「引受人」という名前が登場します。

この引受人は、支払を委託される人です。

 

為替手形では、

振出人が、

受取人に対する支払いを、

引受人に委託する格好になっています。

 

引受人に対して売掛金を持っている人が振出人となるということなので、

その振出人にとっては、

その売掛金と、

受取人に対する買掛金とを相殺してもらうような格好となります。

 

まあ、現在ではほとんど使われていません。

(一部の業界では今でも使われているようですけど。)

 

そして、「自己宛の為替手形」というのは、

為替手形の「振出人」と「受取人」が同一であるものです。

 

おそらくこれは、本来の使われ方ではなかったかもしれませんが、

今ではこの使われ方のほうが多いと思われます。

 

「引受人」が発行した手形が

「振出人」に郵送されてきて、

自分(振出人)を「受取人」として

手形を発行せよ、

という構図です。

 

約束手形は支払人が振出人になっているのに対して、

「自己宛の為替手形」では、

「受取人」が「振出人」になるということ。

「振出人」ということは、つまり、「印紙」を貼ることになります。

 

この「印紙」に着目すれば、

発行する側のメリットとしては、

印紙税がかからないということになるのです。

 

しかし、発行する側のメリットは、

すなわち、

受取る側にはデメリットになります。

 

受取人は手形を振り出すことになるので、

印紙を貼る必要があるのです。

 

受け取った人からすれば、

 

ああ、なるほど、

仕組みは分かりました。

そーゆーことですか、と。

 

で、つぎに、

それ(自己宛の為替手形)をもらってうれしいですか、

ということです。

 

 

代金は、

そもそも振り込んで欲しいものです。

 

もちろん、支払いサイトもあったり、

支払う側と受け取る側とで力関係もあるので、

「下請代金支払遅延等防止法」

の対象になるような場合には、

期日振込じゃなく、

やっぱり手形にしたいということもあるでしょう。

 

じゃあ、その場合には、手形の発行ではなく

「でんさい」にしてくれたらうれしいなと。

 

「でんさい」にしてくれれば、

現物の手形の紙を扱う手間が減るからです。

 

銀行に取立依頼のためにわざわざ足を運ばなくてもいいし、

手形発行の印紙を貼らなくてもいいし、

スタンプとか押印とかの裏書の手間も省けるし、

盗難防止のために金庫内に管理しなくても済むし。

 

 

そもそも一般的ではない方法で決済することは

止めてはどうでしょう。

 

誰でもわかるような方法で支払うほうが

お互いに気持ちの良い関係を結べると思いますよ。

 

大企業なら、経理がしっかりしているので

「自己宛為替手形」でも問題はないでしょうが、

中小の経営者ならびっくりする人がいるかもしれませんし。

 

そもそも、

気持ちの面で、

自己宛為替手形で代金決済するのには

好感が持てませんね。

 

印紙と手間を受取人に負担させるのことに関して

「小ばか」にされた感があります。

 

失礼じゃないか、と。

(もちろん人によるでしょうけど。)

 

 

ということで、

買掛金の支払いのために為替手形を発行するのは

お勧めしません。

 

 

たまの、

頭の体操にはなりますけど、

「ヤメレ」と。

 

ご覧いただきまして誠にありがとうございました。