役職により支給基準を変えている場合の永年勤続表彰の課税
役職により支給基準を変えている場合の永年勤続表彰
永年勤続表彰における記念品は、長期間勤務したことによって、対象となる役員や従業員が会社から支給を受ける儀礼的な側面を有する給付であって、このようなものまでも課税することは社会通念上妥当とは言えないということが配慮されて、課税上弊害がない限り、課税しなくても差し支えないものとして取り扱われています。
このようなことを念頭に、
たとえば、同じ勤続年数で表彰されるものであっても、
役員と従業員とで金額に差を設けているとか、
あるいは役員は5年単位にもかかわらず従業員は10年単位などのように、
支給基準を変えている場合には課税上どのようになるかを見てみましょう。
支給基準を変えている場合の例
永年勤続の表彰の支給基準を変えている場合の例を挙げてみます。
例1
役員には勤続20年目に50万円相当の記念品を支給し、
従業員には勤続20年目に10万円相当の記念品を支給している支給基準である場合
例2
役員は勤続10年目以降5年単位で表彰して記念品を支給し、
従業員には勤続20年目、30年目のみ表彰して記念品を支給している支給基準である場合
上記の2つの例からも分かるように、恣意的に役員を優遇していることが明らかです。
同一の勤続年数であるならば本来は役員であろうが従業員であろうが同一の基準で記念品等の支給をすべきであるところ、役員であるという理由をもって支給基準に差を設けています。
支給基準を変えている場合の課税
所得税
上記の例のように、役員と従業員とで支給基準を変えている場合には、社会通念上妥当であるともいえず、課税上の弊害も生じることから、役員に支給された記念品の全額について、役員に対する給与(経済的利益)として所得税が課税され、源泉徴収することが必要となります。
法人税
また、法人税においても、経済的利益の額が毎月一定しているならば定期同額給与に該当するものとして会社の損金の額に算入されるのですが、永年勤続表彰などのようにスポットで支給される経済的利益については定期同額給与にはまず該当しないので、表彰で支給される記念品については損金の額に算入されないこととなります。
まとめ
- 社会通念上非課税として差し支えない永年勤続の表彰であったとしても、役員と従業員とで支給基準に差を設けている場合には、役員に対する記念品は全額給与として所得税が課税される。
- 定期同額給与に該当しない役員に対する経済的利益は、法人税法上損金の額に算入しない。
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