改善提案等の表彰金にかかる所得区分、ほとんどは給与所得になるのでは。

社内における改善にかかる表彰制度

社内で日常業務の改善をしたとか、5S活動・エルゴノミクス活動での改善をしたとか、安全・衛生活動での改善を行った場合に、会社から表彰されることがあります。

従業員のモチベーションアップや、会社のレベルアップに資するため、特許権を取得するとか発明にかかわるとかまでに至らない程度の日常的な改善についても、社内で表彰制度を設けている会社は多いと思われます。

会社によってまちまちでしょうが、改善のレベルによって、金賞・銀賞・銅賞・鉄賞などの区分が設けられていたり、

星3つ・星2つ・星1つなどの区分とか、点数表示の区分、A・B・Cなどの区分が設けられていたりします。

どのような区分方法であっても、優秀な区分になればなるほど表彰金は気持ち上乗せされていることでしょう。

さて、このような改善の表彰に際して、会社から表彰金が支給されることがありますが、この表彰金の所得税の取り扱いについて、見てみましょう。

 

改善等の表彰金の支給を受ける場合ごとの所得区分

特許等を受けるまでには至らない発明や工夫に対して支給される場合

社内の改善提案制度などにおいて、事務の効率化、作業の合理化、製品の品質の改善や経費の節約等に寄与する工夫、考案等をした人に対して表彰金が支給される場合には、次のように取り扱われます。

1.その工夫、考案等がその人の通常の職務の範囲内である場合

給与所得

2.通常の職務の範囲外である場合で、一時に支給されるもの

一時所得

 

3.通常の職務の範囲外である場合で、その工夫、考案等の実施後の成績等に応じ継続的に支給されるもの

雑所得

 

災害防止等の功績により一時に支給される場合

災害等の防止、または発生した災害等による損害の防止等に功績のあった人に一時に支給する場合には、次のように取り扱われます。

1.その防止等がその人の通常の職務の範囲内である場合(安全部門、守衛など)

給与所得

 

2.その防止等が通常の職務の範囲外である場合

一時所得

 

ひとりごと

所得税の取り扱いによると、

通常の職務の範囲内であるか、または通常の職務の範囲外であるかによって、給与所得に該当するのか、または一時所得や雑所得に該当するかの区分がされていますが、

そもそも通常業務に関係しない提案なんて存在するのかどうか、はなはだ疑問です。

 

普通に会社に勤めていたら分かることですが、

「この仕事は自分の本来の仕事ではない」なんて言いながら改善提案するなんてことは、常識的にはあまりありません。

言われたこと以外は考えるな! という社風の会社とか、

そもそも決まったことだけをするような契約で採用された派遣社員やアルバイトなら例外かもしれませんが、

いまどき、担当や部署間をまたいだ提案や全社的な改善を試みないようであれば、価値のある社員とは言えません。

 

ほんとうの思い付きの改善でない限り、会社で改善することは通常は自分の業務に関係するものです。

経営者目線や管理職目線で考えれば、通常業務とはそれくらい幅の広いものでなければなりません。

 

そういった考え方からして、給与所得になるのか、一時所得になるのか、雑所得になるのかといった区分を設けている所得税に関する法令自体は尊重するとして、

「一時所得の50万円特別控除及び2分の1課税制度」や、「給与所得者の雑所得20万円以下の確定申告不要制度」の適用を狙うといった節税に向かう考え方が存在することに残念な思いをしたことがあります。

私見では、改善提案の表彰金は、ほとんど全てが給与所得となります。

(実際に会社で改善提案する人も、本心ではお分かりではないでしょうか。)

 

節税のためにと言って、わざわざ、本来の業務と、本来ではない業務を区分したうえで、本来の業務でないと判断する方向に傾いていくのは、

会社の発展にも、人間関係にも、モチベーションにも、人材育成にも良い結果があると思えませんので、止めておきましょう。

そして、改善提案は全員参加型にするようにしましょう。

 

ご覧いただきまして誠にありがとうございました。

※この記事は、作成時点の法令または経験などをもとに記載したものです。法改正などにより記載内容に相違が生じる可能性があります。

記事中の意見部分については記載者の見解ですので、実際の適用においては個別具体的な内容をお近くの税理士にご相談くださいますようお願い申し上げます。