家族従業員に退職金を支払ったときに必要経費となるか

 家族従業員に退職金を支払ったときに必要経費となるか

個人事業者が青色申告者であれば、一定の要件をもとに、家族従業員を青色事業専従者として取り扱うことができ、その家族従業員に対して支払った給与の必要経費算入が認められています。

また、青色申告者でなくても、家族従業員について事業専従者控除という給与の経費扱いが認められています。

ところで家族従業員に対して、退職金を支払った場合には、その退職金が個人事業者の必要経費として認められるかどうかについて、見てみましょう。

 

個人事業者が家族従業員に支払った退職金は「必要経費とならない」

結論から申し上げると、家族従業員に支払った退職金は必要経費に算入できません。

 

青色申告者であれば、一定の届出を要件に配偶者やその他の親族に支払った給与について、その事業の所得の計算上必要経費に算入する特例が認められています。

また、いわゆる白色申告者であっても、一定額をその事業の所得の計算上必要経費に算入する特例が認められています。

しかし、これらの規定は、給与について規定したものです。

給与とは、給与所得の収入金額となる給料、賞与、手当などをいい、その専従者がその事業に従事している期間内にその従事した期間に対応して受けるべき給与のみを指しています。

したがって、退職所得の収入金額になるような退職金はこれには含まれていないのです。

 

家族従業員に退職金を払いたいとき

家族従業員に退職金を払いたいときにはどのようにすればよいでしょうか。

たとえ必要経費にならなくても、家族にお金を退職金として払うこ行為までは制限されないので、家族の事業への労にこたえる形で退職金を支払うこと自体はもちろんできます。

ただし、これでは税務上の特典はありません。

 

そこでお勧めするのは、将来の退職金の積み立て資金を名目に、事前にコツコツと積立しておくことです。

積立方法は幾つかあります。

 

イデコへの加入

iDeCo(イデコ)と呼ばれる私的年金の制度があります。

個人型確定拠出年金制度で、加入は強制ではなく任意となっています。

銀行から証券会社まで、多くの金融機関で取り扱っています。

一定の掛け金を従業員自身が拠出して、自身の責任においてその掛金の運用方法を選択します。

 

節税という観点では、入口の掛金拠出時に小規模企業共済等掛金控除を受けることができるのに加え、出口においては掛金とその運用益との合計額を将来給付として受け取るときに、退職所得等の税制上の優遇措置を受けることができることとなっています。

従業員自身の判断で、老後のために退職金や年金の準備をするものです。

 

小規模企業共済への加入

小規模企業共済は国の機関によって運用されている制度で、一定の中小企業や個人事業者が加入できる制度です。

本来は中小企業の経営者、個人事業者を対象とした制度なので家族従業員の全員がこの制度に加入できるわけではありませんが、業種、規模、事業主の共同経営者であることなどの一定の要件を満たせば、家族従業員についても小規模企業共済に加入させることができます。

 

上記のイデコと同じように、

税制上の特典としては、入口の共済掛金の拠出時に小規模企業共済等掛金控除を受けることができるのに加え、出口においては掛金とその運用益との合計額を将来給付として受け取るときに、退職所得等の税制上の優遇措置を受けることができることとなっています。

 

まとめ

  • 個人事業者が家族従業員に支給する退職金は必要経費に算入されない。
  • 退職金を支払うことまで制限されない。
  • 節税をセットで考えるなら、イデコや小規模企業共済への加入が退職金目的としてお勧めである。

 

 

ご覧いただきまして誠にありがとうございました。

 

※この記事は、作成時点の法令または経験などをもとに記載したものです。法改正などにより記載内容に相違が生じる可能性があります。

記事中の意見部分については記載者の見解ですので、実際の適用においては個別具体的な内容をお近くの税理士または税務署にご相談くださいますようお願い申し上げます。