免税事業者が課税事業者となったときの期首棚卸資産に係る仕入税額控除

免税事業者が課税事業者となったときの期首棚卸資産に係る仕入税額控除

消費税の免税事業者については、消費税を納める義務がありません。

一方で、仕入れ税額控除の適用もありません。

そのような免税事業者が新たに本則課税を適用する課税事業者になった場合において、期首時点で免税期間中に仕入れた棚卸資産があるときは、

期首棚卸資産に係る消費税額をその課税事業者となった課税期間において仕入れ税額控除の対象とすることとなります。

これは、消費税が課税される売上げに消費税が課税される仕入れを対応するようにすることが消費税の納税額を計算するうえでの本来あるべき姿となっているからであります。

 

期首棚卸資産に係る消費税額は仕入税額控除の対象となる

免税事業者が新たに課税事業者となる場合に、課税事業者となる日の前日において所有する棚卸資産のうちに、納税義務が免除されていた期間において仕入れた棚卸資産がある場合には、その棚卸資産に係る消費税額を、課税事業者になった課税期間の仕入れに係る消費税額の計算の基礎となる課税仕入れ等の税額とみなして仕入税額控除の対象とします。

 

対象となる棚卸資産の種類

この規定の対象となる棚卸資産は、

商品、製品、半製品、仕掛品、原材料、貯蔵中の消耗品等で、現に所有しているものとなります。

また、棚卸資産の取得費用の額には、その棚卸資産の購入金額のほか、引取運賃や荷造費用など、棚卸資産を購入するために要した費用の額などが含まれます。

 

 

書類の保存要件

この適用を受けるためには、その対象となる棚卸資産の明細を記載した書類をその作成した日の属する課税期間の末日の翌日から2ヵ月を経過した日から7年間保存しなければなりません。

 

免税期間中に仕入れた棚卸資産に係る消費税額の計算方法

平成9年4月1日から平成26年3月31日までに仕入れた棚卸資産を有している場合

その棚卸資産の取得費用の額に105分の4を乗じて棚卸資産に係る消費税額を計算します。

(地方消費税分を含めると105分の5となります。)

 

平成26年4月1日から令和元年9月30日までに仕入れた棚卸資産を有している場合

その棚卸資産の取得費用の額に108分の6.3を乗じて棚卸資産に係る消費税額を計算します。

(地方消費税分を含めると108分の8となります。)

 

令和元年10月1日以降に仕入れた棚卸資産を有している場合

その棚卸資産の取得価額に110分の7.8(軽減税率の適用対象となる棚卸資産については108分の6.24)を乗じて棚卸資産に係る消費税額を計算します。

(地方消費税分を含めると、110分の10で、軽減税率の適用がある棚卸資産については108分の8となります。)

 

 

(参考)課税事業者から新たに免税事業者になる場合

上記の内容とは逆に、課税事業者であった事業者が新たに免税事業者になる場合には、

課税期間の末日に残っている棚卸資産に係る消費税額は仕入税額控除の対象とすることはできません。

 

課税事業者であった課税期間の末日において所有する棚卸資産のうちその課税期間中に仕入れた棚卸資産に係る消費税額は、その課税期間の仕入れに係る消費税額の計算の基礎となる課税仕入れ等の税額には含まれないこととされています。

 

 

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※この記事は、作成時点の法令や経験をもとに概要を記載したもので、記載内容に相違が生じる可能性があります。

また、記事中の特に意見部分については記載者の見解ですので、実際の適用においては必ず個別具体的な内容をお近くの税理士や税務署などにご確認くださいますようお願い申し上げます。