新型コロナウイルス感染症に関連して従業員に支給する見舞金の非課税範囲

新型コロナウイルス感染症に関連して従業員に支給する見舞金の非課税範囲

新型コロナウイルス感染症に関連して、使用人等(役員、使用人)に対して見舞金を支払った場合に、その見舞金が所得税の非課税所得とされる見舞金に該当するかどうかについて、国税庁から法令解釈通達がでていますので、こちらにもその概要を載せておきます。

 

それと、たとえ非課税所得にならなくても見舞金を渡すこと自体躊躇しなくてもよいという個人的な思いを、この記事の最後のほうに記載しておきます。

 

非課税とされる見舞金の範囲

新型コロナウイルス感染症に関連して使用人等が使用者から支給を受ける見舞金のうち次に掲げる要件のいずれも満たすものは、所得税の非課税所得に該当することとされています。

(1) その見舞金が「心身又は資産に加えられた損害につき支払を受けるもの」であること

(2) その見舞金の支給額が「社会通念上相当」であること

(3) その見舞金が「役務の対価たる性質を有していない」こと

 

なお、緊急事態宣言が解除されてから相当期間を経過して支給の決定がされたものについては、非課税所得とされる見舞金に該当しない場合があります。

 

「心身又は資産に加えられた損害につき支払を受けるもの」とは

上記の「心身又は資産に加えられた損害につき支払を受けるもの」とは、例えば次の(1)から(3)のような見舞金が含まれます。

 

(1) 使用人等又はこれらの親族が新型コロナウイルス感染症に感染したため支払を受けるもの

(2) 緊急事態宣言の下において事業の継続を求められる使用者の使用人等で次のイ及びロに該当する者が支払を受けるもの

(緊急事態宣言がされた時から解除されるまでの間に業務に従事せざるを得なかったことに基因して支払を受けるものに限ります。)

イ 多数の者との接触を余儀なくされる業務など新型コロナウイルス感染症に感染する可能性が高い業務に従事している者

ロ 緊急事態宣言がされる前と比較して、相当程度心身に負担がかかっていると認められる者

(3) 使用人等又はこれらの親族が新型コロナウイルス感染症に感染するなどしてその所有する資産を廃棄せざるを得なかった場合に支払を受けるもの

 

「社会通念上相当」の見舞金とは

上記の「社会通念上相当」であるかどうかについては、次の(1)、(2)に掲げる事項を勘案して判断することになります。

 

(1) その見舞金の支給額が、使用人等ごとに新型コロナウイルス感染症に感染する可能性の程度や感染の事実に応じた金額となっており、そのことが使用者の慶弔規程等において明らかにされているかどうか。

(2) その見舞金の支給額が、上記(1)の慶弔規程等や過去の取扱いに照らして相当と認められるものであるかどうか。

 

「役務の対価たる性質を有していないこと」とは

例えば次のような見舞金は、上記の「役務の対価たる性質を有していない」ものには該当しないことになります。

 

(1) 本来受けるべき給与等の額を減額した上で、それに相当する額を支給するもの

(2) 感染の可能性の程度等にかかわらず使用人等に一律に支給するもの

(3) 感染の可能性の程度等が同じと認められる使用人等のうち特定の者にのみ支給するもの

(4) 支給額が通常の給与等の額の多寡に応じて決定されるもの

 

 

以上が、新型コロナウイルス感染症に関連して従業員に支給する見舞金が非課税となるかどうかの基準となります。

 

ひとりごと

この法令解釈通達では新型コロナウイルス感染症に関連して、使用人等(役員、使用人)に対して見舞金を支払った場合に、その見舞金が所得税の非課税所得とされる見舞金に該当するかどうかについて明らかにされているものでありますが、

仮に、その見舞金が、この通達によって非課税所得にならないことが判明したからといっても、

別に、見舞金を渡すという行為自体をこの通達で禁止しているものではありません。

非課税にならなくても、もちろん見舞金を渡しても大丈夫です。

 

一つの考え方として、たとえば、個人事業主からその従業員に対して渡した見舞金について、その個人事業の経費としては取り扱わないこととして

本当の個人間の付き合いや、個人的にささやかな気持ちを示したものであるなどの理由でお金を渡すのであれば、個人間の贈与になると考えられます。

ささやかな気持ちを示すものであれば、通常は数千円とか数万円くらいだと思います。

そして、その気持ちをもらった人については、年間110万円までは贈与税は課税されることはありませんし、

そもそも、「個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物又は見舞いなどのための金品で、社会通念上相当と認められるもの」であれば、贈与税は非課税でさえあります。

 

ちなみに、これが法人からの贈与である場合には、贈与を受けた個人は原則一時所得となります。

一時所得であれば一時所得の特別控除である50万円の範囲内なら所得税はかかりませんが、

そもそも、これを法人から従業員への贈与として取り扱うこと自体に無理があるように思われます。

ですので、法人が使用人等(役員、使用人)に対して見舞金を支払った場合で、その見舞金が所得税の非課税所得とされる見舞金に該当しないのであれば、たんたんと課税される所得として取り扱えばよいのではないでしょうか。

会社からお金をもらっておいて文句を言う従業員なんていないでしょう。

(とはいっても、社会保険の130万円の壁とか、配偶者控除、扶養控除などにも関係があるので、渡す時期や金額によっては事前にそのことにも気を付けてあげたほうが良いと思いますが。。。)

 

 

ご覧いただきまして誠にありがとうございました。

※この記事は、作成時点の法令や経験をもとに概要を記載したもので、記載内容に相違が生じる可能性があります。

また、記事中の特に意見部分については記載者の見解ですので、実際の適用においては必ず個別具体的な内容をお近くの税理士や税務署などにご確認くださいますようお願い申し上げます。