補助金は経費の本体部分のみを対象としている

基本的に補助金は経費の本体部分のみを対象としている

今般、コロナの影響により、国や地方から様々な補助金や給付金などが支給されています。

もっとも、コロナの前からもいくつもの補助金等に関する制度があったので、その制度の趣旨に沿って以前から様々な補助が行われていました。

 

その補助金ですが、消費税の課税事業者(本則課税)に対しては、補助事業にかかった経費の本体部分についてのみを補助の対象とすることとなっていると思います。

 

これは、補助金による収入と、消費税の仕入れ税額控除(還付)とによる、二重交付を避けるための措置なのですが、そのことについて、もう少し見てみましょう。

 

 

仕入れ税額控除部分の二重の交付を避けるため

まず、消費税の納付の仕組みとしては、

①「消費税の課税事業者は、課税売上高に対する消費税額から、課税仕入れに係る消費税額等を控除した額を、消費税等として国に納付する。」

こととなっています。

 

そして、

②「補助金収入は、消費税法上不課税取引に該当する。」

となっています。

 

この2つのことから、

補助金の支給対象となる事業者が課税事業者(本則課税)である場合には、

消費税が課税されない補助金収入がある一方で、補助事業にかかった経費を控除対象仕入税額に算入することが出来るため、その仕入控除税額部分の金額は、事業者に対して二重に交付してしまう可能性が生じるということです。

 

事例

簡単な事例を見てみましょう。

 

消費税部分も補助対象とした場合

もし、本体部分に加えて消費税部分についても補助の対象としてしまうと、

  • 補助金の収入 +110
  • 補助対象となる税込み経費の支払い -110
  • 消費税部分の仕入れ税額控除 +10

差し引き、+10

 

消費税の仕入れ税額控除を行った部分 +10が、

消費税の課税事業者の手元に残ることとなってしまいます。

 

消費税部分が二重交付になってしまっています。

 

 

消費税部分を補助対象から外した場合

上記の問題を解消するために、補助金の金額は、次のように本体部分についてのみ行うこととなっています。

  • 補助金の収入 +100
  • 補助対象となる税込み経費の支払い -110
  • 消費税部分の仕入れ税額控除 +10

差し引き 0

となります。

 

これで、二重交付を避けることが出来ていることが判ります。

 

 

補助金による収入と、消費税の仕入れ税額控除(還付)とによる、二重交付を避けるために、消費税の課税事業者に対する補助金はあらかじめ本体部分についてのみを対象に行うこととなっていることの理由がお分かりいただけたでしょうか。

(消費税の課税事業者についてあらかじめ本体部分についてのみを補助対象としているもののほかに、消費税の申告により事後的に国等に返還させることとなっているようなものや、消費税の課税事業者に該当するか否かにかかわらず本体部分のみが対象となっているものもあります。)

 

参考

次のような記載が小規模事業者持続化補助金の公募要領にあります。

消費税の課税事業者(本則課税)については、あらかじめ二重交付とならないようにされています。

 

 

” 消費税等仕入控除税額について税制上、補助金は消費税(地方消費税を含む。以下同じ。)の課税対象となる売上収入ではなく、特定収入となるため、事業者に消費税を含む補助金が交付された場合、補助金として受けた消費税も事業者の売上げにともなう預かり消費税の対象にはなりません。

補助事業に係る課税仕入れにともない、還付金が発生することとなるため、この還付と補助金交付が二重にならないよう、原則としてあらかじめ補助対象経費から消費税額を減額しておくこととします。

ただし、以下に掲げる補助事業者にあっては、補助事業の遂行に支障をきたす恐れがあるため、消費税等を補助対象経費に含めて補助金額を算定できるものとします。

①消費税法における納税義務者とならない補助事業者

②免税事業者である補助事業者

③簡易課税事業者である補助事業者 ”

 

 

ご覧いただきまして誠にありがとうございました。

※この記事は、作成時点の法令や経験をもとに概要を記載したもので、記載内容に相違が生じる可能性があります。

また、記事中の特に意見部分については記載者の見解ですので、実際の適用においては必ず個別具体的な内容をお近くの税理士や税務署などにご確認くださいますようお願い申し上げます。