相続があった場合の特定期間での判定(消費税の納税義務)

相続があった場合の特定期間での判定(消費税の納税義務)

個人事業者の消費税の納税義務の判定にあたっては、基本的には基準期間(2年前)における課税売上高が1,000万円を超えるのか、または1,000万円以下であるのかによって行われます。

1,000万円を超えていれば消費税の納税義務があり、1,000万円以下であれば消費税の納税義務はありません。

また、この基準期間(2年前)における課税売上高による判定のほかに、「特定期間(前年の1月~6月の半年間)」における課税売上高が1,000万円を超えるのか、または1,000万円以下であるのかによっても、消費税の納税義務の判定が行われることとなっています。

 

今回は、個人事業者が相続により被相続人の事業を承継した場合に、相続人の「特定期間」における課税売上高はどのような計算になるのかについて、見てみましょう。

 

 

消費税の納税義務を判定する「特定期間」

消費税の納税義務の判定については、基本的には、基準期間(2年前)における課税売上高によって行われます。

基準期間における課税売上高が1,000万円以下である者は原則として消費税の免税事業者となっており、

基準期間における課税売上高が1,000万円を超える者は、消費税の課税事業者となっています。

 

また、このほかに、「特定期間(前年の1月~6月の半年間)」における課税売上高でも消費税の納税義務を判定することとなっており、

基準期間における課税売上高が1,000万円以下であったとしても、

「特定期間」における課税売上高が1,000万円を超えているような場合には、

消費税の免税事業者にはならず、課税事業者とされることとなっております。

 

注:特定期間における課税売上高に代えて、特定期間中に支払った給与等(給与・賞与等)の金額によっても判定することができます。(できると書かれています。)

 

 

 

相続により被相続人の事業を承継した場合の特定期間における課税売上高

冒頭の、個人事業者が相続により被相続人の事業を承継した場合に、相続人の「特定期間」における課税売上高はどのようになるかですが、

結論としては、

「相続人の特定期間における課税売上高のみ」で消費税の納税義務の判定をするとなります。

特定期間での判定では、被相続人の課税売上高を使ったり、合算したりするようなことはありません。

 

 

相続があった場合の、相続人の消費税の納税義務の判定(参考)

相続があった場合の、相続人の消費税の納税義務の判定は次のとおりとなっています。

前提として、

相続人は、・免税事業者、・基準期間において事業を行っていない者で、課税事業者の選択をしていない者としておきます。

相続があった年の判定

  1. 相続があった年の基準期間における「被相続人の課税売上高」が1,000万円を超える場合は、相続があった日の翌日から、その年の12月31日までの間の納税義務は免除されません。(相続による事業承継後から、課税事業者となります。)
  2. 相続があった年の基準期間における「被相続人の課税売上高」が1,000万円以下である場合は、相続があった年の納税義務は免除されます。

 

相続があった年の翌年または翌々年の判定

  1. 相続があった年の翌年または翌々年の基準期間における「被相続人の課税売上高」と「相続人の課税売上高」との合計額が1,000万円を超える場合は、相続があった年の翌年または翌々年の納税義務は免除されません。(相続人+被相続人で判定します。)
  2. 相続があった年の翌年または翌々年の基準期間における「被相続人の課税売上高」と「相続人の課税売上高」との合計額が1,000万円以下である場合は、相続があった年の翌年または翌々年の納税義務は免除されます。

 

被相続人が提出した届出の効力

被相続人が提出した「消費税課税事業者選択届出書」「消費税課税期間特例選択等届出書」「消費税簡易課税制度選択届出書」の効力は、その事業を承継した相続人には及びません。

相続人がこれらの規定の適用を受けようとするときは、新たにこれらの届出書を提出しなければなりません。

 

 

ひとりごと

今回の本題には関係ないのですが、特定期間での消費税の納税義務の判定は、特定期間における課税売上高のみならず、給与等の支払額でも判定ができるので、

事業規模が急拡大しているような事業主を除いては、特定期間で納税義務ありと判定されるようなことは少ないと思います。

しかし、給与等の支払額での判定は「できる」とされているので場面によっては役立つでしょうね。。。

 

 

ご覧いただきまして誠にありがとうございました。

※この記事は、作成時点の法令や記載者の経験等をもとに概要を記載したものですので、記載内容に相違が生じる可能性があります。

また、記事中の特に意見部分については記載者の見解ですので、実際の適用においては必ず個別具体的な内容をお近くの税理士や税務署などにご確認くださいますようお願い申し上げます。