実効性が見込まれない担保物がある場合の貸倒損失
実効性が見込まれない担保物がある場合の貸倒損失
たとえば、当社がA社に対して100の貸付債権があって、その担保としてA社の保有不動産(処分見込み価額120)に抵当権を設定しているのですが、
先順位の抵当権を、金融機関が200設定している状況であるとします。
A社は、この保有不動産以外では、債務の弁済のための資力を喪失しているような場合に、
当社としては、担保物である不動産の処分がいまだ完了していないことから、貸倒損失の計上を見合わせることしかできないのかどうかについて、見てみましょう。
原則は、担保物の処分後に貸倒損失を計上
法人の有する金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、
その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができます。
この場合において、その金銭債権について担保物があるときには、
その担保物を処分した後でなければ、貸倒れとして損金経理をすることはできないものとなっています。
事実上、担保物としての実効性がない場合
上記のとおり、原則としては、たとえ担保物に先順位者があるような劣後抵当権であっても、
その担保物を処分した後でなければ、貸倒処理を行うことはできないこととなっています。
しかしながら、担保物の処分価額を明らかに上回る債権を有する先順位の抵当権者がいる場合には、
担保物は名目的なものであり、実質的にまったく担保されていないことが明らかな状態であるといえるでしょう。
そのような状態である場合には、その担保物が処分されたとしても、その処分額から配当を得ることは事実上不可能だと考えられます。
そこで、このような場合には、実際にはまだ換価されていない担保物があったとしても、
事実上、その担保物は担保物としての実効性がないものと認められることから、
その担保物の処分を待つことなく貸倒損失の計上ができることとされています。
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※この記事は、作成時点の法令や記載者の経験等をもとに概要を記載したものですので、記載内容に相違が生じる可能性があります。
また、記事中の特に意見部分については記載者の見解ですので、実際の適用においては必ず個別具体的な内容をお近くの税理士や税務署などにご確認くださいますようお願い申し上げます。