「出荷基準」と「検収基準」で消費税の税率が違う場合の取り扱い(消費税改正)
出荷基準と検収基準で消費税の税率の認識が異なる場合がある
物品の売上・仕入れの計上のタイミングにはいろいろあります。
出荷基準や納品基準(到着基準)、それに検収基準などいろいろあるのですが、物品販売などで結構よく見かけるのは(もちろん商売の内容にもよるでしょうが)、「売上げ側は出荷基準」で、「仕入れ側は検収基準」だったりします。
このように、取引の一方で出荷基準を採用し、もう一方で検収基準を採用している場合で、双方の取引計上日が新消費税法の施行日である2019年10月1をまたいだために、採用する消費税率(旧8%or新10%)が異なるときの取り扱いについて見てみましょう。
出荷が9月、検収が10月の場合
2019年10月1日に消費税率が8%から10%にアップしたことにより、次のようなケースが生じていることはないでしょうか。
販売元は9月末までに出荷したことにより「出荷基準」で売上げて、消費税率を8%として請求書を発行するものの、販売先の仕入れ側の検収は10月になってから完了したので、「検収基準」で消費税率を10%としているケースです。
請求書に記載されている消費税額と、仕入れの計上時の消費税額とに差が生じています。
例えば、
販売元では9月30日に100万円の商品を出荷し、販売先での仕入れ検収が10月2日となっているケースです。
販売元の仕訳
9月30日 (万円)
売掛金 108 / 売上 108 (内、消費税 8)
販売先での仕訳
10月2日 (万円)
仕入 110 (内、消費税 10) / 買掛金 110
何も気にしなければ、このような仕訳になってしまいます。
消費税の仕入れ税額控除は、例外はあるにしろ基本的には多段階累積控除という考え方を採用しているので、売った側と仕入れた側とで認識する消費税額に差が生じることは好まいことではありません。
そこで、国税庁のQ&Aにもありますが、このように消費税率の変更日をまたいで「出荷基準」と「検収基準」があるときの正しい対応の仕方が定められています。
出荷基準の8%で経理処理
国税庁のQ&Aにもありますが、経過措置が適用されるものを除き、販売元が新法施行日である2019年10月1日の前日(9月30日)までに行った課税資産の譲渡等は旧消費税法に基づいて8%で消費税額の計算を行うこととされています。
先ほどのケースであれば、9月30日に販売元が出荷した商品について旧税率である8%で消費税額の計算を行い、販売先の仕入れ計上においても旧税率である8%で消費税額の計算を行うこととなります。
販売元の仕訳
9月30日 (万円)
売掛金 108 / 売上 108 (内、消費税 8)
販売先での正しい仕訳
10月2日 (万円)
仕入 108 (内、消費税 8) / 買掛金 108
想定される困ったこと
販売先から、ウチは10%だと言ってきた
検収の入力を経理部門ではなく、営業部門や購買部門などが行っている取引先の場合には、もしかしたらあるかもしれませんね。
なかなか理解してもらえず、ときには「客の言うとおりに10%で請求を」などと言われることがあるかも知れません。
出荷基準で売上計上をしている販売会社や下請け会社側などにとっては、つらいところがありますよね。
丁寧に「事業者間で収益・費用の計上基準が異なる場合の取扱い」について説明すればご理解いただけることと思います。
領収書に消費税率や消費税額が載っていない
大手のインターネット販売会社で購入したものの領収書には消費税込みの総額だけしか示されていないものがあり、消費税の計算が旧8%なのか、新10%なのか、パッと見て一瞬では判別できないときがあります。
軽減税率である新8%があるときには税法上その旨やその金額を区分して示すことがルールとなっているのですが、出荷日と到着日が法施行日である2019年10月1日をまたいだりして旧8%なのか新10%なのか全然分からない(??)ことも考えられます。
このような場合には、仕入れた事業者側のルールに従って消費税率(旧8%or新10%)を判断して差し支えないでしょう。
そもそも出荷日と到着日が法施行日をまたがなくても、消費税率の変更時期に、税率も税額も示さない総額のみの表示は不親切な感じですよね。(日付を確認してご自身で判断をと。)
ある会社のホームページ上には「税率など表示するように対応する」ような文言が記載されていたはずなのですが、もしかしたら今のところ対応が追い付いていないのかもしれません。
しばらく様子を見てみることにしたいと思います。
ご覧いただきまして誠にありがとうございました。
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