業績不振により受領を辞退した給与の源泉徴収

業績不振により受領を辞退した給与の源泉徴収

業績が不振であるため、役員や使用人がその給与等の一部の受領を辞退することとした場合に、その受領を辞退することとなった部分の報酬が、給与所得として源泉徴収の対象となるのかどうかについて、見てみましょう。

 

 

給与等の支給期の到来に辞退の意思表示をした場合

役員や使用人が支払いを受けるべき給与等の全部または一部の受領を辞退した場合において、その給与等の支給期の到来前に辞退の意思表示をしたものについては、課税しないものとされています。

これは、給与等の支給期の到来前に辞退の意思表示をしたものについては、給与等の請求権が発生していないためとされています。

 

したがって、その辞退した部分の給与等については、所得税等の源泉徴収の必要はありません。

 

 

給与等の支給期の到来したに辞退の意思表示をした場合

しかしながら、役員や使用人が支払いを受けるべき給与等の全部または一部の受領を、その給与等の支給期の到来した後に辞退した場合には、所得税等の源泉徴収の対象となってきます。

 

この場合、給与等の支給期が到来しており、すでに未払いとなっている状態なので、たとえその後に給与等の全部または一部の受領の辞退を受けたとしても、それは給与等の支払者がその役員や使用人から支払債務の免除を受けたこととなります。

そしてこれは、いったん役員や使用人が給与等の支給を受けたと同時に、給与等の支払者に対して任意に返還したものと同様にみることもできるのです。

つまり、いったん給与等の支給を受けた形としてとらえる以上は、所得税等の源泉徴収の必要が生じてくるのです。

 

 

ただし、給与等の支給期の到来した後に辞退の意思表示があった場合においても、次のような場合には、源泉徴収の必要はないとされています。

支払者の債務超過の状態が相当期間継続している場合

基本的には、給与等の支払者が未払いとなっている給与等の辞退を受けた場合には、その辞退を受けた時において、その給与等の支払があったものとして源泉徴収を行う必要があるのですが、

その給与等の支払者の債務超過の状態が相当期間継続しその支払をすることができないと認められる場合に辞退を受けたものであるときには、

源泉徴収の必要がないとされています。

 

役員が次のような理由から未払賞与等の受領を辞退した場合

役員が、次に掲げるような特殊な事情の下において、一般債権者の損失を軽減するためその立場上やむなく、自己が役員となっている法人から受けるべき賞与等その他の源泉徴収の対象となるもので未払のものの受領を辞退した場合には、その辞退により支払わないこととなった部分については、源泉徴収をしなくて差し支えないこととされています。

 

  1. その法人が特別清算開始の命令を受けたこと
  2. その法人が破産手続開始の決定を受けたこと
  3. その法人が再生手続開始の決定を受けたこと
  4. その法人が更生手続の開始決定を受けたこと
  5. その法人が事業不振のため会社整理の状態に陥り、債権者集会等の協議決定により債務の切捨てを行ったこと

 

 

ご覧いただきまして誠にありがとうございました。

※この記事は、作成時点の法令や経験をもとに概要を記載したもので、記載内容に相違が生じる可能性があります。

また、記事中の特に意見部分については記載者の見解ですので、実際の適用においては必ず個別具体的な内容をお近くの税理士や税務署などにご確認くださいますようお願い申し上げます。