自家用車を個人事業用に転用した場合の減価償却の方法
減価償却とは
「減価償却」とは、固定資産を購入したときに、その固定資産の取得価額を少しずつ費用として計上する会計処理のことをいいます。
何年間にもわたって使用できる固定資産の取得価額を、購入した年に一気に費用として全額計上するのは合理的ではありませんよね。
そこで、使用または時の経過によって価値が減少したとされる部分の金額を一定の方法により計算して、その金額を毎年の費用に計上していくのです。
自動車を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却
自動車を購入した当初は自家用車として使用していたけど、その後に開業して、業務用としてもその自動車を使い始めた場合に、どのようにすればよいのでしょうか。
経費にできる金額があるのなら、なんとかして経費にしたいですよね。
このように非業務用から業務用に転用した場合には、次のようにして計算した減価償却費を経費に計上することができるのです。
まずは、未償却残高を計算
【未償却残高の計算】
未償却残高 = 取得価額 - 非業務用期間の「減価の額」
非業務用から業務用に転用したときまでの「減価の額」を計算します。
次に、取得価額から「減価の額」を控除して、業務用として減価償却できる部分の金額(未償却残高)を計算します。
【減価の額の計算】
減価の額は、業務用に転用されるまでの過去部分の減価償却費を計算するのですが、
この場合の注意点が3つあります。
注意点1 減価の額は必ず「旧定額法」で計算
注意点2 減価償却の耐用年数は、法定耐用年数の1.5倍の年数で計算
注意点3 非業務用で使っていた期間は、6月未満切り捨て、6月以上は切り上げの年単位で計算
そして、未償却残高を減価償却する
未償却残高が計算出来れば、あとは、経費計算として、一定の方法により減価償却していけば大丈夫です。
業務用期間における減価償却資産の償却の方法は、その資産の当初の取得年月日により、次表のとおり異なります。このときに、非業務用から業務用に転用した日を取得年月日とはしませんのでご注意ください。
当初の取得年月日 | 建物 | 建物附属設備・構築物 | 左記以外の一般的な有形減価償却資産 |
平成10年3月31日以前 | 旧定額法又は旧定率法 | 旧定額法又は旧定率法 | 旧定額法又は旧定率法 |
平成10年4月1日から平成19年3月31日まで | 旧定額法 | 旧定額法又は旧定率法 | 旧定額法又は旧定率法 |
平成19年4月1日から平成28年3月31日まで | 定額法 | 定額法又は定率法 | 定額法又は定率法 |
平成28年4月1日以後 | 定額法 | 定額法 | 定額法又は定率法 |
※非業務用から業務用に転用した日を取得年月日とはしません。
計算例
設例
2016年4月 自家用車を購入 (新車価格 3,000,000円)
2019年6月 個人事業用に転用 (非業務用期間 3年2か月)
減価の額を計算します。
3,000,000円×0.9×0.111(※1)×3年(※2)=899,100円
減価の額は、899,100円と計算されました。
自動車の耐用年数6年、 6年×1.5=9年、 9年の旧定額法の償却率 → 0.111(※1)
3年2か月 6月未満切捨 → 3年(※2)
未償却残高を計算します。
未償却残高 = 取得価額 - 非業務用期間の「減価の額」
この式にあてはめると、
3,000,000円-899,100円=2,100,900円
よって、
未償却残高は、2,100,900円と計算されました。
なお、この未償却残高は、備忘価額を除き、「将来の分も含んだ償却可能限度額」みたいなものと表現できると思います。
減価償却費の計算をします。
2016年4月(平成28年4月)取得で、「定額法」で計算としておきます。
6年の定額法の償却率 → 0.167
転用1年目 3,000,000円×0.167×7/12(6月転用)=292,250円
転用2年目 3,000,000円×0.167×12/12=501,000円
基本的に、定額法の減価償却費はこのようになります。
このようにして計算した減価償却費に、業務で使用する合理的な割合を乗じて計算した金額が個人事業者の必要経費となります。
未償却残高の推移
転用1年目は、減価償却費が292,250円となりますので、
償却後の未償却残高は、
2,100,900円-292,250円=1,808,650円
転用2年目は、減価償却費が501,000円となりますので、
償却後の未償却残高は、
1,808,650-501,000円=1,307,650円
となります。
(業務で使用する合理的な割合 参考 ↓)
ご覧いただきまして誠にありがとうございました。
※この記事は、作成時点の法令や経験をもとに概要を記載したもので、記載内容に相違が生じる可能性があります。
また、記事中の特に意見部分については記載者の見解ですので、実際の適用においては必ず個別具体的な内容をお近くの専門家にご確認くださいますようお願い申し上げます。