補助金、助成金を受け取った時に活用される「圧縮記帳」という制度
補助金、助成金とは
補助金や助成金は、国や地方公共団体から一定の要件を満たしたときに申請をすることにより受け取ることができるもので、その種類は3000種類にも上るといわれています。
補助金も助成金も受け取るためには審査がありますが、助成金は一定の支給要件を満たせばほぼ受け取ることができるのに対して、補助金は必ずしも受け取れるわけではなく審査の際に他の申請と比較した場合の優位性をアピールすることが必要になってきたりします。
とはいっても、細かいことは抜きにして大きな括りで見てみれば、どちらも国等の政策を推進するために一定の事業者に提供される返済義務のない資金だと思っていただいて大丈夫です。
補助金、助成金を受け取った時に活用される「圧縮記帳」という制度
法人が、補助金や助成金の対象となる機械装置などの固定資産を購入して、補助金等を受け取ったときには、その金額は一度に益金の額に算入されて法人税等が課されることとなります。
せっかく補助金等を受け取ったのに課税対象となることにより税金で持っていかれることになりますので、本来の目的のために十分な効果が発揮できません。
そこで登場するのが「圧縮記帳」という制度で、この制度を活用することにより、本来の目的のために十分な効果を発揮できるように近づけることができます。
圧縮記帳を活用すれば、補助金等を受け取った年度にその全額が益金になるのではなくて、基本的には補助金等の受け取りの対象となった機械装置などの固定資産の減価償却を行う年数にわたって、何分割にも分割されて益金の額とすることができるので、受け取った補助金等の効果を発揮しやすい制度であると言えるでしょう。
(個人の所得税でも同じような制度がありますがここでは割愛します。)
圧縮記帳の効果を見てみましょう
<設例>
- 1000万円の機械装置を購入
- 補助金600万円を受け取り
- 機械装置の耐用年数12年(定率法償却率:0.208)
圧縮記帳をしない場合の仕訳
(単位:万円)
機械装置の購入
機械装置 1000 / 現金預金 1000
補助金の受け取り
現金預金 600 / 雑益 600
減価償却費の計上
1000×償却率0.208
減価償却費 208 / 機械装置 208
結果として、
補助金600万円 マイナス 減価償却費208万円 = 392万円(これが益金となります。)
仮に税率を 35%とすると、392万円×35%で、137.2万円 の税金がかかります。
1000万円の受け取りがあったのに、税金により、初年度で 137.2万円の目減りが生じています。
圧縮記帳をした場合の仕訳
会計処理には幾つかの方法がありますが、ここでは直接減額方式という方法での説明としています。
(単位:万円)
機械装置の購入
機械装置 1000 / 現金預金 1000
補助金の受け取り
現金預金 600 / 雑益 600
圧縮損の計上(圧縮記帳)
圧縮損 600 / 機械装置 600
減価償却費の計上
(1000-600)×償却率0.208
減価償却費 83.2 / 機械装置 83.2
(補助金600万円 マイナス 圧縮損600万円) マイナス 減価償却費83.2万円 = 赤字(ここだけ抜き出してみれば益金は生じません。)
つまり機械装置に関していえば、補助金を受け取ったことによる税金はかかっていないことになり、初年度で補助金の目減りは生じていません。
結局、圧縮記帳は、課税の繰り延べである
圧縮記帳を適用すれば、初年度に税金による補助金等の目減りはなくなることが分かりました。
注意すべきは次年度以降で、圧縮記帳を適用すれば固定資産の取得価額が減額されている(1000-600)ことになっているので、上記のとおり、減価償却費が少なくなることです。
上記の減価償却費の比較:
- 圧縮記帳を適用しない場合の減価償却費 208万円
- 圧縮記帳を適用した場合の減価償却費 83.2万円
このとおり、圧縮記帳を適用した方が減価償却費が少なくなっています。
この傾向は、2年目以降も同じです。
減価償却費が少なく計上されるということは、つまり、利益(益金)が多く計上される結果となるので、税金がたくさんかかることとなります。
このように、圧縮記帳を適用すると、初年度については税金がかからないようになっていますが、逆に、次年度以降の減価償却費が少なくなり利益が多く計上されるのです。
つまり、
「圧縮記帳」は、税金がなくなるという制度ではなく、「課税が繰り延べられる制度」であることにご留意ください。
まとめ
圧縮記帳をすると、初年度に受け取った補助金等が税金により一時に目減りしないので、補助金等の効果を発揮しやすいといえる。
圧縮記帳は、税金がなくなる制度ではなく、「課税が繰り延べされる制度」である。
ご覧いただきまして誠にありがとうございました。