決算における費用の洗い替え処理の確認と、消費税率アップについて気を付けること

決算における費用の洗い替え処理で、消費税率アップについて気を付けること

決算における費用の洗い替え処理で消費税率アップについて気を付けることといえば、消費税率アップ前の費用の戻入をする場合には、それをアップ前の旧税率にて行うことです。

消費税率が仕訳日で自動判定されるような会計システムを使って仕訳入力を進めてしまうと、費用の金額も消費税の金額も合わなくなってしまうので、注意するようにしましょう。

 

決算における費用の洗い替え処理

取引の記帳においては発生主義によることが望ましいこととされているので、年度を通じた取引の記帳は発生主義にされている会社が多いと思われますが、

期中においては、特に中小企業については、現金主義で費用の計上を行っておいて、

決算処理で費用の未払い計上や前払い計上をすることによって、年間を通じて取引の記帳が発生主義に仕上がるように経理している会社も一定数あるでしょう。

 

特に、毎月の金額が平準化されているような費用項目については、期中の現金主義を採用する傾向が強いと思われます。

 

以下では、このような処理をしている会社の仕訳例の確認と、消費税率がアップされたときの注意点について見てみます。

 

費用の洗い替え処理の例

例として、3月決算の会社を見てみます。

発生主義を採用しているものの、期中は現金主義で費用(水道光熱費)の計上をしていることとします。

 

期中の仕訳

2月分の水道光熱費29,000円が、3月になって普通預金から引き落とされた。

〇1年3月×日

(円)

借方 金額 貸方 金額
水道光熱費 29,000 普通預金 29,000

 

2月分の水道光熱費の明細が3月に届いて、3月中に普通預金から引き落とされる例ですが、期中は現金主義としているので、3月の仕訳となっています。

 

期末の仕訳(決算)

3月分の水道光熱費30,000円が、4月になって普通預金から引き落とされることとなった。

〇1年3月31日(決算)

(円)

借方 金額 貸方 金額
水道光熱費 30,000 未払費用 30,000

 

このように、決算においては、3月分の費用は3月の仕訳として未払い計上しておくことによって、年間を通じて発生主義になるようにします。

 

翌期(首)の仕訳

3月に未払い計上した水道光熱費が、4月になって普通預金から引き落とされた。

〇1年4月×日

(円)

借方 金額 貸方 金額
水道光熱費 30,000 普通預金 30,000

 

厳密には期首の仕訳ではなく、実際に引き落としされた日の仕訳となります。

洗い替えをするので、ここでは未払費用の取り崩しは行いません。

 

翌期中の仕訳

〇2年2月分の水道光熱費31,000円が、〇2年3月になって普通預金から引き落とされた。

〇2年3月×日

(円)

借方 金額 貸方 金額
水道光熱費 31,000 普通預金 31,000

 

2月分の水道光熱費の明細が3月に届いて、3月中に普通預金から引き落とされる例ですが、期中は現金主義としているので、3月の仕訳となっています。

期中のほかの月の仕訳は省略していますが、期中は、実際に引き落とされたほかの月の水道光熱費も現金主義で仕訳します。

 

 

翌期末の洗い替え仕訳(決算)

まず、前期末の決算仕訳である水道光熱費30,000円の戻入を行います。

前期末(決算)の洗い替えなのですが、期首の仕訳で計上された費用を戻し入れるものとイメージしたほうが見方としてはしっくりくるかもしれません。

〇2年3月31日(決算)

(円)

借方 金額 貸方 金額
未払費用 30,000 水道光熱費 30,000

 

 

続いて、前期末の〇1年と同じように、〇2年4月になってから引き落とされる水道光熱費(32,000円とします。)の未払い計上を行います。

〇2年3月31日(決算)

(円)

借方 金額 貸方 金額
水道光熱費 32,000 未払費用 32,000

 

 

この一連の洗い替え仕訳と期中現金主義の仕訳により、

毎月ほぼ一定額の費用の計上も行うことが可能になりますし、年度を通じて発生主義になっていることがお分かりいただけることと思います。

 

消費税率がアップされたときの注意点

最後に、消費税がアップされたときの注意点です。

仮に、翌期(〇1年の10月頃とか)に消費税率がアップされたとします。

 

消費税率アップ前の費用の戻入をする場合には、それをアップ前の旧税率にて行うことに注意が必要です。

たとえ消費税率がアップされた後の日付である翌期末(〇2年3月31日)の仕訳であったとしても、戻入対象が消費税率アップ前の旧税率の費用(〇1年3月の費用)であるならば、旧税率で戻入仕訳をします。

消費税率アップ後の新税率で戻入の仕訳入力を進めてしまうと、費用の金額も消費税の金額も合わなくなってしまうので、注意するようにしましょう。

まさに、令和1年10月を含む期において、期中のみ現金主義を採用している会社は、お気を付けください。

 

ご覧いただきまして誠にありがとうございました。

※この記事は、作成時点の法令や経験をもとに概要を記載したもので、記載内容に相違が生じる可能性があります。

また、記事中の特に意見部分については記載者の見解ですので、実際の適用においては必ず個別具体的な内容をお近くの税理士や税務署などにご確認くださいますようお願い申し上げます。