取引先の保証債務を履行したことによる損失の必要経費算入

取引先の保証債務を履行したことによる損失の必要経費算入

たとえば、ある個人事業者が、数年前に重要な取引先からの要請によりその取引先の借入金の保証人となり、そのこともあって取引も順調に拡大することができていたのですが、

今年になってその取引先が倒産したことにより、やむを得ず保証をしていた額を支払うことがあった場合において、

その後その取引先の行方が分からなくなり、連絡を取ることもできず、求償権を行使することが不能となったとします。

 

このようなケースにおけるその取引先の保証債務を履行したことに伴う求償権の行使不能による損失が、その個人事業者の事業所得等の必要経費に算入できるかどうかについて、見てみましょう。

 

「事業の遂行上生じた保証債務」かどうか

保証債務の履行に伴う求償権の全部または一部について行使をすることができなくなった場合には、

その保証債務が「事業の遂行上生じた保証債務」であれば、貸倒損失として、その個人事業者の不動産所得の金額、事業所得の金額または山林所得の金額の計算上必要経費に算入することができます。

 

「事業の遂行上」の判断

冒頭のような事例の場合には、

  • その個人事業者の重要な取引先の保証債務であること
  • その保証債務の引き受けにより取引が順調に拡大することが見込めたこと

となっており、

あわせて、

  • 保証額がその取引先との取引内容や規模などからみて相当であると認められる金額であるならば、

その保証債務は「事業の遂行上」生じたものであると認められると考えられます。

 

「事業の遂行上」とならない場合

上記のような事業に関係のないもの、たとえば、友人や親戚関係の保証債務に関して生じたものである場合には、事業所得等の必要経費に算入することはできません。

 

必要経費算入は回収不能年分

求償権を行使することが不能となり、回収することができなくなったときには、

その回収不能になった年分の事業所得等の金額の計算上必要経費に算入することとなります。

 

ご覧いただきまして誠にありがとうございました。

※この記事は、作成時点の法令や経験をもとに概要を記載したもので、記載内容に相違が生じる可能性があります。

また、記事中の特に意見部分については記載者の見解ですので、実際の適用においては必ず個別具体的な内容をお近くの税理士や税務署などにご確認くださいますようお願い申し上げます。