生命保険の「団体扱い事務手数料」を受け取ったときの取り扱い

生命保険の「団体扱い事務手数料」を受け取ったとき

個人が生命保険に加入すると、その保険料の支払いは、その契約者(保険料負担者)の個人口座からの自動き落しであったり、あるいはカード決済であったりすることが一般的です。

しかし、その個人が会社に勤務している従業員であれば、「団体扱い」という仕組みを使って保険料を支払うことが可能な場合があります。

 

「団体扱い」で保険料を支払うことになれば、

基本的には、従業員個人の保険料は給与から天引きされます。

そして、会社が各従業員の保険料を一か月分とりまとめて、保険会社に振込などの方法で支払ってくれるようになります。

 

会社によって「団体扱い」の取り扱いをすることができる生命保険会社に違いはありますが、同じ生命保険会社に加入している従業員が10人以上集まれば「団体扱い」にすることが可能とされています。

 

「団体扱い」で保険料を支払うことにより、

従業員にとっては、

  • 保険料の割引が受けられる。
  • 支払い忘れが起こりにくい。
  • 年末調整の際の「保険料控除等申告書」に会社側があらかじめ記入してくれる(場合が多いと思われます)。

などのメリットがあることから、

従業員が契約している保険が、その勤め先である会社が「団体扱い」の取り扱いをしている保険会社のものであれば、

従業員は、そのメリットを受けるために「団体扱い」を希望することが多いと思われます。

 

 

「団体扱い事務手数料」

さて、この「団体扱い」ですが、

会社が一括して取りまとめてくれることにより、保険会社にとってもその分の事務処理が軽減されるというメリットがあります。

 

ですので、その事務処理の軽減の対価として、保険会社から「事務手数料」という名目で、会社に一定の金額が返還されることとなります。

返還されるといっても、実際には、会社が月々まとめて支払う保険料から相殺されます。

およそ3%くらいの事務手数料であることが多いでしょう。

 

この「事務手数料」の支払いは、あくまでも会社に対する支払いなので、保険契約者である各従業員に対して直接支払ってくれるものではありません。

 

 

事務手数料を受取った時の処理

会社がこの「事務手数料」を受取ったときの処理について、次の2つのケースがありますので、それぞれについて見てみたいと思います。

 

全額会社の収益に計上するケース

事務手数料は、各従業員の保険料を根源としているものの、取りまとめて保険料を支払うという事務自体は会社で行っています。

そのことから、事務手数料の収入はあくまでも会社に帰属するとの考え方です。これが一般的でしょう。

 

各従業員の保険料の取りまとめのほか、会社を契約者とする保険料についても一緒に取りまとめていることも多くあり、

まとまった保険料の額になれば、会社にとっても事務手数料収入は貴重な収入となる可能性があります。

 

<会社の仕訳例>

営業外収入である雑収入を使用することが一般的です。

(借方)預金/(貸方)雑収入

 

 

各従業員に帰属させるケース

生命保険会社から支払われる事務手数料のうち、各従業員の契約に基づく保険料を根本としている部分については、各従業員にその事務手数料を還元させようという考え方です。

 

しかし、保険会社から支払われる事務手数料は、いったんは各従業員の保険料分も含めて、全額が会社側に入金(実際は、保険料支払い時に相殺)されます。

保険契約者である従業員各個人に対して保険会社から個別に支払われることはありません。

 

そこで、会社側が、個人の年間支払保険料に応じた事務手数料を、各従業員に還元します。

 

会社の経理や総務部門にその計算させるのはちょっと気の毒なところもありますが、

それでもたとえば年度末などに1年間分の事務手数料を精算しているケースがあります。

(退職者の取り扱いとか、端数とかをどうするのとか、実際はいろいろ割り切りがあるのですが。)

 

<会社の仕訳例>

月々の入金分を仮受金などでプールしておき、年度末に一括して精算する場合には、年度末の仕訳は次のようになります。

(借方)仮受金

/(貸方)雑収入  (会社契約分)

/(貸方)現金預金 (従業員契約分)

 

 

注意点

いずれのケースにも共通しているのは

最終的に会社が受領する生命保険会社からの事務手数料は、会社の収益(益金)に計上しなければならないということです。

 

全額会社の収益に計上するケースであらば、その全額が会社の収益(益金)になりますし、

各従業員部分を従業員に帰属させるケースであれば、その帰属させた部分以外の残りの部分について、会社の収益(益金)に計上することになります。

 

まあ、当然といえば当然なのですが、

仮に、これが会社の本業でないことなどを理由に、事務手数料を会社の社長など経営者個人の取り分としていれば、役員賞与に該当することにもなり、損金不算入となる可能性も出てくることにご注意ください。

 

ご覧いただきまして誠にありがとうございました。

※この記事は、作成時点の法令や経験をもとに概要を記載したもので、記載内容に相違が生じる可能性があります。

また、記事中の特に意見部分については記載者の見解ですので、実際の適用においては必ず個別具体的な内容をお近くの税理士や税務署などにご確認くださいますようお願い申し上げます。