役員退職金を現物で支給する場合
役員退職金を現物で支給する場合
役員の退職金を現金で支給する場合には、一般的にはそのための現金預金を会社が準備しておかなければなりませんが、
資金繰りの都合がつかないなどの理由により、会社の所有する不動産などの現物支給をもって退職金の支給にする場合があるかもしれません。
売却して現金化できる不動産などの物件があるにもかかわらず、資金繰りの都合がつかない場合があります。
よくあるのは、
すぐには買い手が見つからないケースが考えられます。
また、いったん売却した後、その後資金があるときに買い戻したいのに、
買い戻せるかどうかわからないことから、売却を躊躇していることも考えられます。
あるいは、
資金繰りの都合上なんの問題もないけれど、あえて現物で支給する場合もあると思われます。
たとえば、
会社の創業者として個人的に思い入れがあり、どうしてもその物件が欲しい、その物件じゃなきゃイヤだとか、
現金化するために立地条件が良い物件を第三者に渡してしまったら、もしかしたら競合他社が買い取るなどして、会社の将来に不安を残してしまう恐れがあるとか、
退職後のこととか、会社の将来のこととかを考えてあえて現物支給にするなど、
いろいろあると思います。
このように、不動産などの現物でもって役員退職金の支給とする理由はいろいろあるかもしれませんが、
そのときにはいくつか注意点がありますので、それらについて見てみましょう。
時価で支給額を考えること
株主総会や取締役会で役員退職金の現物支給の金額を決議するときには、
会社の帳簿に載っているその不動産などの簿価で決議するのではなく、そのときの時価でもって支給額を決議する必要があります。
これは、いったん現金で支給する決議をおこなった後になって資金繰り上の問題が生じたことにより代物弁済に変更する場合も同じで、その不動産などの時価で支給額を考える必要があります。
譲渡による損益が生じること
会社としては、現物支給する対象となる不動産などを、いったん時価で売却したものとなります。
時価が簿価よりも上回っていれば、その不動産の売却による譲渡益が生じますし、
時価が簿価よりも低ければ、その不動産の売却による譲渡損が生じます。
簿価で決議したときには過大役員退職金に注意
役員退職金の現物支給を決議するときには、そのときの時価でもって支給額を決議する必要があるのですが、
もし仮に、簿価で役員退職金の支給金額の決議をしてしまった場合には注意が必要です。
とくに、その簿価を時価が上回っているような不動産などの現物支給をしたときには、
簿価と時価との差額は、役員退職金の払い過ぎになってしまいます。
このような払い過ぎの退職金は、過大な役員退職金として取り扱われてしまい、損金の額に算入することができなくなってしまいます。
また、役員個人の退職所得にかかる源泉所得税も再計算して、不足分を追加で徴収しなければなりません。
ただし、簿価と時価との差額について、その役員から回収することになっておれば、このような問題はありません。
ご覧いただきまして誠にありがとうございました。
※この記事は、作成時点の法令や記載者の経験をもとに概要を記載したものですので、記載内容に相違が生じる可能性があります。
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