開業届と青色申告承認申請書は一緒に提出しましょう。
開業届と青色申告承認申請書は一緒に提出しましょう。
コロナ以降、給付金の申請や、各補助金のコロナ特別枠の申請などにおいて、個人事業者の開業届の重要性が再認識されてきている感があります。
そこで、今までは開業届を提出していなかったけど、この際にということで、開業届を税務署に提出している人が増えていることでしょう。
開業届を提出するのは、個人事業者にとってはもちろん必要なことであり強くお勧めしているのですが、その開業届の提出の際に青色申告承認申請書を提出していらっしゃらない方も一定数いらっしゃるように見受けます。
今年(令和2年)は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により期限内に提出することができなくても、提出が可能となった時点で税務署に申し出をすることにより、個別に期限延長の取扱いをすることとされております。
そのことから、たとえば本年の年初に事業を開始した場合の開業届の提出期限(1か月以内)や、青色申告承認申請書の提出期限(3月15日や2か月以内など)がすでに過ぎてしまっている場合でも、税務署の窓口で両方同時に提出すれば、本年分からの適用が認められていることでもありますので、
開業届と青色申告承認申請はこの際一緒に提出するようにいたしましょう。
青色申告の承認を受けているからといって、必ず青色申告の要件を満たす複式簿記での記帳、B/S作成などをしなければならないわけではありません。
やっぱり無理、という場合には白色で申告すればよいだけの話です。
当初は青色申告なんてできないと思っていても、やってみれば案外できるかもしれません。
そのチャンスを残しておくためにも、最初から青色申告の承認申請をしておくことをお勧めいたします。
青色申告することの主な特典
青色申告することにより受けられる主な特典は次のとおりです。
青色申告特別控除
- 取引を正規の簿記の原則(複式簿記)による記帳、
- 貸借対照表および損益計算書を確定申告書に添付、
- 期限内に提出
の場合には、
原則として、最高55万円の所得が控除されます。
なお、令和2年分以後の青色申告特別控除については、この55万円の青色申告特別控除を受けることができる人が、e-Taxによる電子申告を行っているなどの場合には、
55万円にプラス10万円されて、65万円の青色申告特別控除が受けられます。
これは、不動産所得または事業所得の人が対象です。
なお、上記以外の青色申告者については、不動産所得、事業所得および山林所得 を通じて、最高10万円の控除となります。
青色事業専従者給与
青色申告者と生計を一にしている配偶者やその他の親族(年齢15歳以上)で、その青色申告者の仕事に専従している人に支払った給与を、必要経費に算入することができる制度です。
本来なら、同じ財布で生活していることもあり、親族間の給与は認められないところ、青色申告者にはこれを認めているというものです。
ただし、その給与の金額は、事前に税務署への届出が必要で、かつ仕事の対価として適正な金額でなければなりません。
なお、この青色事業専従者として給与の支払を受ける人は、所得控除の対象である控除対象配偶者や扶養親族にはなれません。
純損失の繰り越し、繰り戻し
コロナの影響で今年の事業が赤字になった場合に、この制度の内容はとても威力を発揮すると思います。
事業所得などが損失(赤字)となった場合で、損益通算の規定を適用してもなお控除しきれない部分の金額(純損失の金額)が生じたときには、
その損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年分の所得金額から控除(黒字との相殺)することができるものです。
ちなみに、前年も青色申告をしている場合には、純損失の「繰越し」に代えて、その損失額を前年に「繰り戻し」て、前年分の所得税の還付を受けることもできます。
以上が、青色申告することの主な特典となります。
個人事業の開業届
新たに事業を開始したときの手続きです。
対象者
新たに事業所得、不動産所得、または山林所得を生ずべき事業の開始等をした人が対象者となっています。
提出期限
通常は、事業の開始等の事実があった日から、1か月以内に提出することとなっています。
所得税の青色申告承認申請
青色申告の承認を受けようとする場合の手続です。
提出期限
原則として、新たに青色申告の申請をする人は、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。
ただし、その年の1月16日以後に新規に業務を開始した場合には、業務を開始した日から2か月以内が提出期限になっています。(個人事業を相続した場合には別途期限が定められています。)
なお、令和2年分については、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、その提出が可能となった時点で税務署に申し出ることにより、個別に期限延長の取扱いをすることとされていますので、
帳簿書類の備付け・保存などが青色申告の所定の定めに従って行われている場合には、その申請により、令和2年分の所得税から青色申告をすることができることとなっています。
まとめ
冒頭の繰り返しになりますが、青色申告の承認を受けているからといって、必ずしも青色申告の要件を満たすように複雑な記帳などをしなければならないわけではありません。
結果的に無理だった場合には、青色申告ではなく、白色で申告すればよいだけの話です。
上記の「青色申告することの主な特典」にもあるように、青色申告では様々な特典を受けることができます。
青色申告なんて無理、と思っていたとしても、やってみればできる可能性もあるので、そのチャンスを残しておくためにも、最初から開業届と同時に青色申告の承認申請をしておくことをお勧めいたします。
ご覧いただきまして誠にありがとうございました。
※この記事は、作成時点の法令や記載者の経験等をもとに概要を記載したものですので、記載内容に相違が生じる可能性があります。
また、記事中の特に意見部分については記載者の見解ですので、実際の適用においては必ず個別具体的な内容をお近くの税理士や税務署などにご確認くださいますようお願い申し上げます。