事業譲渡で譲り受けた売掛金が貸倒れた時の消費税の取り扱い
事業譲渡で譲り受けた売掛金の貸倒れ時の消費税
事業の承継の方法にはいくつかの方法があり、たとえば会社であれば合併や分割、個人の事業であれば相続といった方法(形)がありますが、
事業譲渡という形で、たとえば経営不振に陥っている会社から、再建対象と成り得る部門のみを抜き出して譲り受けたりすることもあります。
今回は、事業の承継を、事業譲渡という形で行ったときの債権(売掛金)が貸し倒れたときの、消費税の税額控除について、見てみたいと思います。
貸倒れにかかる消費税額の控除
消費税の課税事業者が、取引の相手方に対する課税売上にかかる売掛金が貸倒れとなったときには、
その貸倒れとなった売掛金の金額に対応する消費税額(税込みの売掛金の額に含まれている消費税部分)を、
その課税事業者の貸倒れの発生した課税期間の
売上げに対する消費税額から控除することとなります。
これを、「貸倒れにかかる消費税額の控除」といいます。
「貸倒れにかかる消費税額の控除」の対象となる売掛金の貸倒れ
消費税額の控除の対象となる貸倒れは、消費税の課税対象となる取引の売掛金等に限られています。
そして、貸倒れの例としては、次のようなことがあった場合となっています。
- 更生計画認可の決定、再生計画認可の決定などにより債権の切捨てがあったこと。
- 債務者の財産状況、支払能力等からみてその債務者が債務の全額を弁済できないことが明らかであること。
- 法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で、一定の要件に該当する基準により債権の切捨てがあったこと。
- 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その債権の弁済を受けることができないと認められる場合に、その債務者に対し書面により債務の免除を行ったこと。
合併、分割や相続により承継した売掛金の貸倒れの場合
「合併する会社」は、「合併される会社」の権利義務を、「分割承継する会社」は、「分割される会社」の権利義務をそれぞれ包括的に承継するので、
消費税の考え方としても、この考え方に沿った考え方になっています。
すなわち、元々は、「貸倒れにかかる消費税額の控除」の対象は、当初に売上を計上した「合併された会社」や「分割された会社」で貸倒れが生じたときが対象となっているものなのですが、
「合併した会社」や「分割承継した会社」が、「合併された会社」や「分割された会社」の事業を包括的に承継した場合において、その承継した売掛金が貸し倒れたときには、
「合併した会社」や、「分割承継した会社」で生じた売掛金が貸し倒れたものとみなして、「貸倒れにかかる消費税額の控除」の適用ができるようになっているのです。
これは、相続があった場合にも同じように整理されています。
「被相続人」が売り上げた際の売掛金が、「相続人」が相続した後に貸倒れとなった場合には、
「相続人」が売り上げた売掛金が貸し倒れたものとみなして、「貸倒れにかかる消費税額の控除」の適用ができるようになっています。
事業譲渡により承継した売掛金の貸倒れの場合
事業譲渡の場合には、どうでしょうか?
事業譲渡も、合併、分割や相続と同じように売掛金などの資産の移転が行なわれますが、
違うところとしては、資産負債の包括的な移転ではなく、
優良事業だけの売買がされているように、一部分だけの移転も認められているところです。
したがって、事業譲渡は、個別の売買取引と同じように、資産や負債を個々に売買しているものととらえられています。
このようなことから、合併や分割、あるいは相続とは異なり、事業譲渡における売掛金の承継は、金銭債権の売買として取り扱われています。
金銭債権の売買ということは、消費税が非課税とされる取引として取り扱われるということとなります。
消費税額の控除の対象となる貸倒れは、消費税の課税対象となる取引の売掛金等に限られていますので、
消費税が非課税とされた売掛金が貸倒れとなっても、「貸倒れにかかる消費税額の控除」の適用は受けることができないこととなります。
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