総合課税の譲渡損で損益通算できない場合

総合課税の譲渡損で損益通算できない場合がある

所得税の計算では、資産を譲渡した場合に赤字が生じたときには、その赤字が所得税の総合課税の対象となる資産から生じたものであれば、基本的にはその赤字は他の所得との損益通算の対象となります。

しかし、総合課税の譲渡損(赤字)であっても、損益通算の対象とならない場合もあります。

今回は、損益通算の対象とならない場合とはどのような場合なのかについて、見てみましょう。

 

 

損益通算とは

損益通算とは、赤字と黒字との相殺のことです。

具体的には、各種所得金額の計算上生じた損失のうち、「一定の所得」についてのみ、一定の順序にしたがって、総所得金額、退職所得金額または山林所得金額等を計算する際に、他の各種所得の金額から控除することです。

この「一定の所得」は、次の所得をいいます。

 

  • 不動産所得
  • 事業所得
  • 譲渡所得
  • 山林所得

 

譲渡所得については総合課税となるものが対象です。分離課税とされる土地・建物や株式等にかかる損失は、今回の記事でお話しする損益通算には含んでおりません(記載を省略しています。)。つまり、マイホームを譲渡したときの赤字の取り扱いなど一定のものは省略しています。

 

 

総合課税の譲渡所得の赤字で損益通算できない場合

総合課税の譲渡所得(非課税とされるものは除きます。)の赤字であっても、次のような場合には、損益通算ができません。

 

生活に通常必要でない資産にかかる損失の場合

所得税では、生活に通常必要でない資産に係る所得の金額の計算上生じた損失(赤字)は、一定のものを除いて、基本的に他の各種所得の金額との損益通算ができないこととなっています。

生活に通常必要でない資産とは

生活に通常必要でない資産とは、次に掲げる資産をいいます。

  • 競走馬、その他射こう的行為の手段となる動産
  • 主として趣味、娯楽、保養または鑑賞の目的で所有する不動産
  • 主として趣味、娯楽、保養または鑑賞の目的で所有する不動産以外の資産(ゴルフ会員権等)
  • 生活の用に供する動産で、1個または1組の価額が30万円を超える貴金属、書画、骨とうなど

 

※ゴルフ会員権の譲渡による赤字は、平成26年3月末までに生じたものは損益通算が可能となっていました。

 

著しく低い価額で譲渡したことによる損失の場合

個人に対して、譲渡所得の基因となる資産を著しく低い価額で譲渡した場合に、その譲渡により譲渡所得の金額にに赤字が生じたときには、

その赤字はなかったものとみなされるため、他の各種所得の金額との損益通算ができないこととなっています。

ちなみに、著しく低い価額での譲渡とは、時価の2分の1未満の対価での譲渡をいいます。

なお、この場合には、買い手である個人に贈与税がかかる場合があるので注意が必要と言えます。

 

 

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※この記事は、作成時点の法令や記載者の経験等をもとに概要を記載したものですので、記載内容に相違が生じる可能性があります。

また、記事中の特に意見部分については記載者の見解ですので、実際の適用においては必ず個別具体的な内容をお近くの税理士や税務署などにご確認くださいますようお願い申し上げます。