売上げの一部を寄附した場合の必要経費の取扱い
売上げの一部を寄附した場合の必要経費の取扱い
個人事業者が売上代金の一部を寄附した場合にその寄付金が必要経費となるための要件が、新型コロナウイルス感染症に関連する税務上の取扱い関係のFAQ(国税庁)に掲載されていたのですが、こちらにも、その内容を紹介しておきたいと思います。
なお、新型コロナウイルス感染症に関連する税務上の取扱い関係のFAQ(国税庁)に掲載されているものですが、実質的な内容として、必要経費となる要件を満たしているのであれば、特にコロナ禍に限らず平時でも取り組める内容となっていると考えます。
個人事業者が売上代金の一部を寄附した場合
紹介<事例>としては、
食料品の小売販売をしている個人事業者が、売上げの一部を医療機関に寄附する取組を始めたことに関し、
①指定商品の売上金額の一定割合を寄附金額とすること
②寄附先、寄附日などをあらかじめ設定し、指定商品を購入するお客様に理解してもらうため店内ポスターやホームページなどで広く一般に周知していること
③寄附を実施した後には、その旨も同様に周知すること
となっています。
これを予定通りに実施した場合に、この寄附金の支出が、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することができるかどうか、というものです。
必要経費となる要件
結論としては、
医療機関に寄附した金額が、事前に広く一般に周知していた取組によるものであることが明らかである場合に限り、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することができます。
もともと、必要経費とされるのは、収入金額を得るため直接要した費用と販売費・一般管理費等の所得を生ずべき業務について生じた費用とされていますが、
<事例>の場合、
①所定の日に売上金額の一定割合の金額を指定された医療機関に寄附することを店内ポスターなどで広く一般に周知していたとのことで、
この取組は、新型コロナウイルス禍の下で社会的に必要とされる医療機関を支援する目的のほかに、集客を目的とした一種の「広告宣伝」としての効果を有しているものと認められます。
また、
②顧客が指定商品を購入する際には、店側と顧客との間で、この取組に合意していたものと考えられ、売上の一部から所定の金額を医療機関に寄附する義務が生じていることになります。
したがって、医療機関に寄附をしたことによる支出は事業の遂行上必要なものとして生じたものと考えられ、その支出は、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することができます。
逆に言えば、あらかじめ周知する内容が不明確である場合など、
次のような場合には、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできません。
- 周知する内容を”売上げの「一部を寄附」します”としか示していない場合(寄附金額が不明確)
- 周知する内容を”医療機関に寄附します”としか示していない場合(寄附先が不明確)
- 周知内容と異なる内容の寄附を行っている場合(事業の遂行上必要かどうか不明確)
必要経費とならない場合
個人事業主が支出した寄附金で、必要経費に算入されないものについては、事業主個人の家事上の経費となります。
家事上の経費となる寄付金の寄附先が、国や地方公共団体などの寄附金(税額)控除の対象となっている場合には、その控除の適用を受けることができます。
ご覧いただきまして誠にありがとうございました。
※この記事は、作成時点の法令や記載者の経験等をもとに概要を記載したものですので、記載内容に相違が生じる可能性があります。
また、記事中の特に意見部分については記載者の見解ですので、実際の適用においては必ず個別具体的な内容をお近くの税理士や税務署などにご確認くださいますようお願い申し上げます。