返還しない保証金等の収益計上額
返還しない保証金等の収益計上額
自社で所有する不動産を外部に賃貸するにあたって保証金を預かることとしている場合において、
その一部を償却して退去時に返還しないこととしているときには、
いつの時点で、その返還しない保証金を収益に計上すればよいのかについて、以前の記事でお話ししました。
(以前の記事はこちらです↓)
今回は、その金額が、退去時の賃料をもとに計算することとしているなどの理由により、
契約当初から金額が変動するかもしれない場合における収益計上額の計算について、見てみたいと思います。
契約時に返還不要額が確定している場合(原則)
預かった保証金や敷金については、その返還不要が明らかになった事業年度において、
その明らかになった金額を収益に計上することが原則となっています。
ですので、契約当初から保証金や敷金の一部の返還不要が確定している場合には、
その契約をした事業年度において、その返還不要部分の金額を収益に計上することとなっています。
たとえば、預かった保証金のうち20%を償却する、といった契約となっていれば、
その契約をした事業年度において、その保証金のうち20%相当額を償却して収益に計上することとなります。
返還不要額が変動する可能性のある場合
預かった保証金のうち、退去時に返還しないこととなる金額が変動する可能性のある場合はどうすればよいのでしょうか。
たとえば、返還しないこととなる保証金を「退去時の賃料の2か月分」と定めて賃貸借契約を締結しているような場合ですが、
賃料が増額改定されたときや減額改定されたときには返還しないこととなる保証金の額が変動する可能性が生じてきます。
このような契約の場合には、どのようにすればよいのでしょうか。
契約時の返還不要額をいったん計上
預かった保証金や敷金については、その返還不要が明らかになった事業年度において、
その明らかになった金額を収益に計上することが原則となっていますので、
返還不要額が変動する可能性のある場合には、退去時まで金額が明らかにならないとの理由で、
退去時まで収益に計上する必要はない、との考え方も生じることと思われます。
しかしながら、上記のように「退去時の賃料の2か月分」が返還不要になることが賃貸借契約上明らかにされている場合には、
たとえ返還不要額が最終的には変動する可能性が残っていたとしても、
その返還不要が明らかとなった契約を締結した事業年度に効力が生じていると考えられることから、
その時点における返還不要額を計算して収益に計上することとなっています。
返還不要額の変動による差額は、収益または費用に計上
契約を締結した事業年度後になって、賃料の額が改定されたことにより、
いったん収益に計上した返還不要額に差額が生じた場合には、
次のように処理することとなります。
※上記と同じく「退去時の賃料の2か月分」が返還不要となっている契約としておきます。
増額改定の場合
賃料の額が増額改定されたことにより、いったん収益に計上した金額に不足が生じたときには、
その改定された事業年度において、その不足部分の金額を収益に計上することとなります。
<計算式>
改定後の2か月分の賃料 - 当初の2か月分の賃料 = 収益計上額
減額改定の場合
賃料の額が減額改定されたことにより、いったん収益に計上した金額が過大になったときには、
その改定された事業年度において、その過大となっている部分の金額を費用に計上することとなります。
<計算式>
当初の2か月分の賃料 - 改定後の2か月分の賃料 = 費用計上額
ご覧いただきまして誠にありがとうございました。
※この記事は、作成時点の法令や記載者の経験等をもとに概要を記載したものですので、記載内容に相違が生じる可能性があります。
また、記事中の特に意見部分については記載者の見解ですので、実際の適用においては必ず個別具体的な内容をお近くの税理士や税務署などにご確認くださいますようお願い申し上げます。