債権放棄をして寄附金となるか、貸倒損失となるか

債権放棄をして寄附金となるか、貸倒損失となるか

自社の取引先である会社が経営不振に陥ったことにより、その会社に対する債権の一部を放棄し、

その結果として破産となった場合よりも少しでも多くの債権の回収を行いたいと考えることがあるかもしれません。

今回は、そのような取引先の会社に対する債権の一部を放棄することが、寄附金として取り扱われるのか、

それとも、貸倒損失として認められるのかについて、見てみましょう。

 

 

債権放棄をして寄附金とされる場合

自社の取引先である会社が返済能力を有しているのか有していないのかの判断がつかないような状況での債権放棄については、

原則的にはその取引先に対する寄附金となると考えられます。

 

寄附金は、取引先等に対し反対給付を伴わない任意の財産給付としての性格を有しており、

直接的に事業との関連があるのかどうかあいまいな面があるといえますが、

取引先である会社に対して債権放棄をするということは、経済的な利益の無償供与であることから、

債権放棄することによる自社の損失はその取引先に対する寄付金とされることも考えられます。

 

 

債権放棄をして貸倒損失とされる場合

自社が債権放棄をしたとしても、つぎのような事実が発生した場合であれば、その金銭債権額のうちつぎに掲げる金額については、

その事実が生じた事業年度において貸倒損失として処理することとされています。

 

  1. 更生計画認可の決定または再生計画認可の決定があった場合において、これらの決定により切り捨てられることとなった部分の金額
  2. 特別清算に係る協定の認可の決定があった場合において、この決定により切り捨てられることとなった部分の金額
  3. 法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で、次に掲げるものにより切り捨てられることとなった部分の金額 ①債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの ②行政機関または金融機関その他の第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約でその内容が①に準ずるもの
  4. 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、かつその金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額

 

 

書面による債権放棄について

書面による債権放棄については、法的には債権が消滅することにはなるのですが、

自社の取引先である会社が返済能力を有しているのか有していないのかが分からないような状態であるならば、

その債権放棄については、その取引先に対する寄附金となる可能性が生じます。

 

しかし、自社が一部の債権放棄を行った結果、より多くの債権の回収が見込めるようになるとの判断から債権放棄を行うのであれば、

総合的に判断すれば、自社の行為について経済的な合理性があると認められる可能性が高くなると考えます。

 

そこで、私見としては、書面による債権放棄をする際には、

取引先である会社が返済能力を有しているのか有していないのかが分からないような状態では行わずに、取引先の資産状況等により返済能力がないと判断してから債権放棄を行うか、

または、一部の債権放棄を行うことにより、諸々の経緯から総合的に判断して、結果としてより多くの債権の回収が見込めるというような合理的な判断に基づいて行うことが必要ではないかと考えます。

 

 

 

ご覧いただきまして誠にありがとうございました。

※この記事は、作成時点の法令や記載者の経験等をもとに概要を記載したものですので、記載内容に相違が生じる可能性があります。

また、記事中の特に意見部分については記載者の見解ですので、実際の適用においては必ず個別具体的な内容をお近くの税理士や税務署などにご確認くださいますようお願い申し上げます。