得意先から支払いを拒否されたときに貸倒損失が計上できるか

得意先から支払いを拒否されたときに貸倒損失が計上できるか

当社と付き合いがある得意先との間で、債権の回収をめぐってトラブルが生じる可能性が生じないとも限りません。

当初の約束と違うではないか、といった話になることや、事後になって商品や価格に対して不満が生じたことなど、得意先との間で何らかの営業上のトラブルが生じないとも限りません。

 

このように、得意先との間で何らかのトラブルが生じたことにより、その得意先から支払いを拒否され、取引を停止した後、支払いがされないまま1年以上経過したような場合に、

その得意先に対して有する債権について、税務上、貸倒損失を計上することができるのかどうかについて、見てみましょう。

 

 

取引先とのトラブルが原因の支払拒否は対象外

たしかに、継続的な取引を停止した後、1年以上経過してもなおその取引先に対する債権が回収できない場合には、

損金経理を要件に貸倒損失を計上(損金に算入)することができる取り扱いがあります。

(参考:「得意先が代金を支払ってくれなくなったときの貸倒損失」)

 

しかし、その取り扱いは、あくまでもその取引先の資産状況や、支払能力等が悪化したことにより、継続的な取引を停止した後1年以上経過してもなおその取引先に対する債権が回収できない場合に貸倒損失が計上できるという取り扱いであり、

回収不能となったのかどうかの判断を、形式的、簡素化したものであるともいえます。

そのため、この1年基準といった形式的な取扱いにおいては、取引先との間で生じた営業上のトラブルが原因で支払拒否されたことにより債権が回収できていない場合を対象にはしておりません。

 

つまり、取引先とのトラブルが原因で1年以上債権の回収ができていないからといっても、その取引先が以前と同じように支払能力等を有していることも考えられることから、

取引停止後1年以上経過したというような形式上の基準だけでは、貸倒損失の計上は認められていないということになります。

 

 

 

先般、「得意先が代金を支払ってくれなくなったときの貸倒損失」という記事を書きましたが、

”1年以上経過”といった形式的な判断だけでは貸倒損失の計上ができないということで、本記事も参考にしていただければと思います。

 

 

 

ご覧いただきまして誠にありがとうございました。

※この記事は、作成時点の法令や記載者の経験等をもとに概要を記載したものですので、記載内容に相違が生じる可能性があります。

また、記事中の特に意見部分については記載者の見解ですので、実際の適用においては必ず個別具体的な内容をお近くの税理士や税務署などにご確認くださいますようお願い申し上げます。