資格取得費用を開業費にすることができるかどうか
資格取得費用を開業費とすることができるか
個人事業者が開業するまでの間に特別に支払った一定の費用については開業費として貸借対照表に計上して、その後、任意に償却して必要経費に算入することができることとされています。
開業するまでの費用といっても、何でもかんでも開業費にすることはできません。
例えば、固定資産の取得費用や販売商品の仕入れ代金などは開業費にすることができません。
一方で、開店オープンのチラシなどの広告宣伝費や、開業セミナーへの参加費用、開業調査費、許認可費、印鑑や名刺の作成費など、様々な費用を開業費にすることができます。
また、開業までに要した費用ですが、開業前の何年間まで有効といったような期間制限はされていません。
開業の準備を始めたときからでよいこととされております。
さて、そんな中で悩ましいのが資格取得費です。
開業費になるのか、開業費にならないのか。。。
日本語で、「資格」と一言に表現してみても、その内容や、取得の経緯は様々です。
今回はその資格取得費と開業費の関係について考察してみましょう。
有資格者にしか行うことができない業務をするための資格取得費用
例えば、医師であれば医療行為、
弁護士や司法書士、税理士などの士業であれば、それぞれの法律で定められた独占行為があります。
無資格者には行なえない業務というものがあり、無資格者が行うと、それは違法行為になります。
開業費との関係ですが、
これらの資格取得費用は開業費にすることができません。
開業費は、あくまで開業の準備を始めたときからの費用です。
開業のための準備費用といっても、開業するための資格すらないのであれば、開業をすることがそもそも不可能です。
(意気込みや、気持ちの上ではもちろん別なのですが、)実質的に、資格を取得できるのかどうか分からないような状態では開業の準備をすることはできないということもありますので、資格取得費用は開業費とすることは認められていないのです。
資格の有無にかかわらず、業務をすることができるものに関する資格取得費用
有資格者にしか行うことができない業務に関する資格取得費用はまだ分かりやすいのですが、
悩ましいのは、(誤解を恐れずに言ってみれば、)本人が希望すれば、たとえ無資格者であっても開業することができる業務に関する資格取得費用です。
具体的な名称を掲げるのは省略しますが、
- 広告宣伝的な意味合いのある資格、
- 市場調査、トレンド調査の一環として取得する資格、
- 最新技術を調査、習得するために取得する資格、
- 看板に箔をつけるための資格
というものも存在します。
私はこの場合はケースバイケースだと考えています。
そもそもどのような考えを出発点として取得した資格なのでしょうか。
本人が、開業を決意し、開業準備を始めてから開業までの間に、看板や名刺に箔をつけるためや、サービスの腕を磨くため、市場調査のために取得した資格であれば、開業費になると考えられます。
しかし、本人が、開業とはまったく関係なく興味本位で取得した資格や、仮に資格が取得できなかったら開業しなかったような場合には、開業費になるとは考えられません。
資格取得の領収書は残すことができても、こういったことは記録に残すことが難しいので悩ましいのですが、
他の人に説明ができるかどうか、例えば極端な話、税務調査があった場合でも、ちゃんと説明できるかどうかで判断すればよいのではないでしょうか。
資格がなくても始めることができる商売であるならば、資格取得に関する自分のスタンスをはっきりさせた上で、取得の経緯を説明できるようにしておくということです。
一言で「資格」と言っても様々です。
資格取得費用は開業費にできない、ということもよく聞くのですが、
そもそもその資格の内容や、取得の経緯が大切といえるでしょう。
事実はどうなのかをよく考えて、開業費にするのかどうかを決めてみてはいかがでしょうか。