個人事業から法人成りした場合の退職手当等の勤続期間
個人事業から法人成りした場合の退職手当等の勤続期間
はじめは個人事業からスタートし、事業の拡大とともにその個人事業を法人化していくことがあります。
個人事業のときからの従業員は、起業当時の苦労を共にした仲間で、気心の知れた仲間であることが多く、法人成りして規模の拡大を図ってから採用した従業員と比べ、
経営者としては、いくつかの面でその長年の苦労に応えてあげたいと思う気持ちがあるのではないでしょうか。
たとえば退職手当等の支給に関しても、法人成りする前の個人事業のときからの勤続年数をもとに支給額の計算をすることとしたいと思われることがあるでしょう。
このように個人事業当時から法人の従業員として引き続き勤務している者がある場合に、
その者が退職する時に支払う退職手当等にかかる退職所得控除額の計算の基礎となる勤続年数は、個人事業当時の期間と、個人とは異なる人格となった法人成り後の期間とを通算することが認められるかどうかについて、見てみましょう。
退職金規定等に明記することなどで通算が認められる
退職所得控除額の計算の基礎となる勤続年数は、原則として、退職手当等の支払者の下で退職の日まで引き続き勤務した期間の年数(勤続期間に1年に満たない端数があるときは1年に切り上げ。)となっています。
そして、法人成りする前の個人事業当時の期間と法人成り後の期間とを通算して退職手当等を支払う場合には、その旨が退職金規定等に明記されているなど一定の場合に限り、退職所得控除額の計算の基礎となる勤続年数について、個人事業当時の期間と法人成り後の期間とを通算することが認められています。
通算することが認められない場合も
退職手当等の支給計算に関して個人事業当時の期間と法人成り後の期間とを通算する旨が退職金規定等に定められていれば、原則として退職所得控除額の計算の基礎となる勤続年数についても、個人事業当時の期間と法人成り後の期間とを通算することが認められています。
しかしながら、退職金規定等で退職手当等の計算の基礎となる期間が法人成り後の期間となっているような場合には、個人事業当時の期間を通算することはできません。
また、青色事業専従者に関しても注意が必要です。
個人事業当時の従業員が青色事業専従者であった場合には、同一生計内での勤務であり、他の一般の従業員と同じような労使関係があったと取り扱うことは適当ではないと考えられるため、個人事業当時の期間を通算することはできません。
これは、青色事業専従者の退職金を必要経費に算入することができないことと同じであると考えられます。
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※この記事は、作成時点の法令や経験をもとに概要を記載したもので、記載内容に相違が生じる可能性があります。
また、記事中の特に意見部分については記載者の見解ですので、実際の適用においては必ず個別具体的な内容をお近くの税理士や税務署などにご確認くださいますようお願い申し上げます。