金銭に代えて土地で代物弁済をした場合の譲渡所得について

金銭に代えて土地で代物弁済をした場合

本来なら債権者に対して金銭で弁済することになるものを、金銭での弁済にかえて金銭以外の資産で弁済することを、「代物弁済」といいます。

今回は、個人が金融機関から借入していた金額の返済を、金銭ではなくて、金融機関に担保として提供していた土地で代物弁済をした場合の所得について、見てみましょう。

 

 

代物弁済により消滅した債務の金額を譲渡所得の収入金額に計上

金銭による債務の弁済に代えて、資産を債権者に引き渡して債務の消滅をさせることを、「代物弁済」といいます。

この「代物弁済」が行われた場合には、資産を債権者に引き渡すことで債権者に対する債務が消滅することから、債務者には、債権の消滅という「経済的利益」が生じることとなります。

 

これは、行為としては、金銭以外の資産で債務の弁済をしたことになのですが、

考え方の順序としては、

いったん、金銭以外の資産を債権者以外の者に譲渡をして、

つぎに、その譲渡により収受した金銭を、債権者に支払うという行為と同じととらえることとなります。

 

したがって、代物弁済により消滅した債務の額を、債務者である個人の譲渡所得の収入金額として、譲渡所得の計算をすることとなるのです。

 

<例>

たとえば、所有する土地を担保に金融機関から1,000万円の融資をうけたものの、その後の資金繰りの悪化により全額返済のめどが立たなくなったことから、その土地を債権者である金融機関に引き渡した場合には、譲渡所得の収入金額は次のようになります。

なお、金融機関からの融資に関する未払いの利息が100万円あることとしておきます。

 

債務の消滅という経済的利益の額:

  1.  土地を1,100万円で譲渡
  2.  融資金 1,000万円 + 未払いの利息 100万円 = 1,100万円の返済(債務の消滅)

 

したがって、担保として提供していた土地の譲渡による収入金額は、1,100万円となります。

 

 

非課税となる場合

今回の例ではありませんが、仮に、強制換価手続により資産が競売などをされた場合には、そのことによる所得は非課税とされています。

これは、資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難な場合に、 強制換価手続により資産を譲渡したことによる所得、および強制換価手続の執行が避けられないと認められる場合における資産の譲渡による所得で、その譲渡代金の全部が債務の弁済に充てられたときには、譲渡所得は非課税とされているものです。

 

 

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※この記事は、作成時点の法令や経験をもとに概要を記載したもので、記載内容に相違が生じる可能性があります。

また、記事中の特に意見部分については記載者の見解ですので、実際の適用においては必ず個別具体的な内容をお近くの税理士や税務署などにご確認くださいますようお願い申し上げます。