中小企業投資促進税制の特別償却と特別控除

中小企業投資促進税制の特別償却と特別控除

資本金3,000万円以下の中小企業者等が機械装置などを取得等して、その事業年度において中小企業投資促進税制の適用を受けようとしたときに、

中小企業投資促進税制の特別償却または特別控除のどちらを選択すればよいのかについて、見てみましょう。

 

中小企業投資促進税制

中小企業投資促進税制とは、青色申告書を提出する中小企業者などが、令和3年3月31日までに新品の機械装置などを取得し、または製作して、

国内にある製造業、建設業などの指定事業の用に供した場合には、

その指定事業の用に供した事業年度において、特別償却または税額控除の適用をうけることができるものです。

 

対象資産

上記の新品の「機械装置など」は、次のような機械装置や工具などをいいます。(詳細は省略)

  • 機械装置   160万円以上のもの
  • 一定の工具  120万円以上のもの
  • ソフトウェア 70万円以上のもの
  • 総重量3.5トン以上の貨物運搬車両
  • 内航海運業用の船舶

平成29年改正で、残念ながら器具備品が対象外となっています。

 

特別償却率、税額控除率

特別償却率

特別償却を選択する場合の特別償却率は30%となっています。

したがって、償却限度額は、普通償却限度額+取得価額×30%となります。

ただし、船舶については、普通償却限度額+取得価額×75%×30%となります。

 

特別控除率

取得価額×7%

 

なお、所有権移転外リース取引により賃借人が取得したものとされる資産については、特別償却の適用ができませんので税額控除の適用のみとなります。

また、特別控除には、その事業年度の法人税額の20%までといった税額控除限度額があるので、計算上特別控除額がある場合でも、税額控除限度額で頭打ちとなってしまいます。(ただし、1年間の繰越規定があります。)

 

 

(適用除外事業者に関することや、特定経営力向上設備等に該当する場合など、詳細については省略しています。)

 

 

どちらがおすすめか

特別償却は、いつ償却するかといった期間損益の問題です。

初期の減価償却費が多く計上されますので、足元の節税にはなりますが、

そのぶん将来の減価償却費が少なくなりますので、将来的には増税となります。

結果的には減価償却費はトータルの期間では同額となるので、いつ償却するのかというだけの話です。

 

これに対して、特別控除は、永久的に効き目が出るものです。

初期の税額を安くする代わりに、将来の税額を増やします、とは言ってきません。

いったん税額を控除したことは将来にわたって有効とされます。

 

以上のことから、基本的には、特別償却よりも特別控除をおすすめします。

 

ただし、資金繰り上の問題や、決算書の見た目の問題(当方は余り気にしませんが。)、

特別控除にある税額控除限度額の頭打ちの問題(1年間の繰越規定はあります。)など、

一定の事情により特別償却を選択するほうが良いケースももちろん考えられます。

その場合には、特別償却を選択し、赤字になればその赤字を欠損金として最大10年繰り越すのも手でしょう。

 

ちなみに、資金繰りだけの問題であれば、もちろん資産の取得価額がどれほどかにもよりますが、

この制度では、特別償却も特別控除もそれほど資金繰り上の影響は生じないと考えます。

(取得価額のおよそ2%ほどの差と考えます。)

 

会社の置かれている状況等により、総合的によりふさわしいと思われる方を選択すればよいでしょう。

 

 

ご覧いただきまして誠にありがとうございました。

※この記事は、作成時点の法令や記載者の経験等をもとに概要を記載したものですので、記載内容に相違が生じる可能性があります。

また、記事中の特に意見部分については記載者の見解ですので、実際の適用においては必ず個別具体的な内容をお近くの税理士や税務署などにご確認くださいますようお願い申し上げます。