法人の消費税の納税義務の免税の判定
法人の消費税の納税義務の判定
「基準期間における課税売上高」が1,000万円以下の法人は、原則として、その課税期間については消費税の納税の義務が免除されます。
しかし、基準期間における課税売上高のみで消費税の納税義務の判定は完結しません。
特に、基準期間のない設立したばかりの法人の納税義務の判定には、幾つかのポイントがあるので、設立初年度から順を追って見てみましょう。
設立初年度の消費税の納税義務の判定
ポイント① 設立資本金が1,000万円以上かどうか
設立資本金が1,000万円以上の場合
設立資本金が1,000万円以上の場合には、納税義務は免除されません。
設立初年度から課税事業者となります。
設立資本金が1,000万円未満の場合
設立資本金が1,000万円未満の場合には → ポイント②へ
特定新規設立法人かどうかについても判定します。
(並行して同時に判定すればよいのですが、この記事では順を追って話を進めていきます。)
ポイント② 特定新規設立法人かどうか
「特定新規設立法人」とは、大企業の子会社のこと
「特定新規設立法人」とは、資本金が1,000万円未満の新規に設立した法人で、いわゆる大企業やそのグループ企業(基準期間の課税売上高が5億円超)に50%超支配されている法人のことをいいます。
特定新規設立法人である場合
特定新規設立法人である場合には、納税義務は免除されません。
設立初年度から課税事業者となります。
(大企業を細分化して子会社をたくさん設立しても、免税事業者にはならないということですね。)
特定新規設立法人でない場合
ポイント①で、設立資本金が1,000万円未満であり、
かつ、特定新規設立法人でもない場合には、納税義務は免除されます。
基準期間における課税売上高がないので、設立初年度は免税事業者となります。
設立2年度目の消費税の納税義務の判定
次のポイント①とポイント②は、上記の設立初年度の判定と同様です。
ただし、ポイント①では、設立資本金ではなく、期首の資本金で判定するということなので、増資があった場合等にご注意ください。
ポイント① 期首の資本金が1,000万円以上かどうか
期首の資本金が1,000万円以上の場合
期首の資本金が1,000万円以上の場合には、納税義務は免除されません。
設立2年度目は課税事業者となります。
期首の資本金が1,000万円未満の場合
期首の資本金が1,000万円未満の場合には → ポイント②へ
特定新規設立法人かどうかについても判定します。
(そして、ポイント③へ。ここでも順を追って話を進めることにします。)
ポイント② 特定新規設立法人かどうか
特定新規設立法人である場合
特定新規設立法人である場合には、納税義務は免除されません。
設立2年度目は課税事業者となります。
特定新規設立法人でない場合
ポイント①で、期首の資本金が1,000万円未満であり、かつ、特定新規設立法人でもない場合には、
→ ポイント③についても判定します。
ポイント③ 特定期間の課税売上高が1,000万円超かどうか
特定期間の課税売上高(及び、給与等支払額)が1,000万円を超える場合
特定期間(原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間。ここでは設立後6か月間のこと。)の課税売上高(及び、給与等支払額)が1,000万円を超える場合には、納税義務は免除されません。
設立2年度目は課税事業者となります。
特定期間の課税売上高(又は、給与等支払額)が1,000万円以下の場合
ポイント①で、期首の資本金が1,000万円未満であり、
ポイント②で、特定新規設立法人でもなく、
特定期間(原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間。ここでは設立後6か月間のこと。)の課税売上高(又は、給与等支払額)が1,000万円以下の場合には、納税義務は免除されます。
設立2年度目は免税事業者となります。
ただし、設立初年度が7か月以下の短期事業年度である場合には、ポイント③の特定期間の課税売上高判定は不要となり、ポイント①とポイント②で判定することとなります。
設立3年度目の消費税の納税義務の判定
原則として、「基準期間における課税売上高」が1,000万円以下かどうかにより、消費税の納税義務の判定を行います。
また、「基準期間における課税売上高」の判定と合わせて、特定期間の課税売上高(又は、給与等支払額)の判定も行います。
ポイント① 基準期間における課税売上高が1000万円超かどうか
基準期間における課税売上高が1000万円を超える場合
基準期間における課税売上高が1000万円を超える場合には、消費税の納税義務は免除されません。
課税事業者となります。
基準期間における課税売上高が1000万円以下の場合
→ ポイント②へ
特定期間の課税売上高についても判定します。
ポイント② 特定期間の課税売上高が1,000万円超かどうか
特定期間の課税売上高(及び、給与等支払額)が1,000万円を超える場合
特定期間の課税売上高(及び、給与等支払額)が1,000万円を超える場合には、消費税の納税義務は免除されません。
課税事業者となります。
特定期間の課税売上高(又は、給与等支払額)が1,000万円以下の場合
ポイント①で、基準期間における課税売上高が1000万円以下であり、かつ、特定期間の課税売上高(又は、給与等支払額)が1,000万円以下の場合には、納税義務は免除されます。
免税事業者となります。
「基準期間における課税売上高」とは
「基準期間における課税売上高」とは、法人については、原則としては、前々事業年度の課税売上高のことをいいます。
仮に基準期間が1年でない場合には、一定の算式によって1年分の課税売上高相当額を計算をするなどの一定の方法により、納税義務があるのか(課税事業者)、または納税義務がないのか(免税事業者)の判定を行います。
また、「課税売上高」を計算する場合において、
基準期間が課税事業者であったときには、その基準期間中の売上高には消費税が含まれていることから、税込み売上高に含まれている消費税の税抜き処理を行って課税売上高の計算をします。
逆に、基準期間が免税事業者であったときには、その基準期間中の売上高には消費税が含まれていないこととされるので、税抜き処理をしないで、そのままの金額が課税売上高となります。
課税事業者を選択することができます
免税事業者と判定されると、消費税の申告・納付の義務がありませんが、免税事業者であると還付を受けたくても受けることができません。
そこで、免税事業者と判定されたにもかかわらず、あえて「課税事業者」を選んだ方がよいケースもあります。
例えば、
輸出免税となる海外への売り上げが主体となるケースや、
初期の商品の仕入れなどで多額の課税仕入れが先行して発生するケースなど、「仮受消費税」よりも「仮払消費税」の方が多くなるときに判断することがあります。
「仮払消費税」から「仮受消費税」を差し引いた差額の還付を受けたいと考える場合には、「消費税課税事業者選択届出書」を提出して「課税事業者」となる選択も視野に入れておいた方が良いでしょう。ただし、原則的には、2年間継続適用となりますので、よく試算してから判断するようにしてください。
ご覧いただきまして誠にありがとうございました。
※この記事は、作成時点の法令や経験をもとに概要を記載したものです。法改正等があった場合には記載内容に相違が生じる可能性があります。
また、記事中の特に意見部分については作成者の見解ですので、実際の適用時には個別具体的な内容をお近くの専門家にご相談くださいますようお願い申し上げます。