親族が会社員、アルバイト、パートで給与収入を得て、他に副業もしている場合の扶養親族、扶養控除の判定
はじめに
年末調整の時期になると、会社員の方については、会社から「給与所得者の扶養控除等申告書」が配布されますが、その時点になってはじめて、昨年までは扶養の範囲内であったご家族が今年はたくさん稼いでいることを知ったりすることがあろうかと思います。
親族が所得税の扶養親族になるのかならないのかで、納税者本人の所得税の金額も変わってきます。
そこでまず、扶養親族の範囲を確認して、
次に、親族が給与所得者であり、かつ副業をしている場合について見てみようと思います。
扶養控除を受ける親族の要件、扶養親族の範囲
所得税で扶養控除を受ける扶養親族とは、基本的にその年の12月31日現在で、次のすべてに当てはまる人のことをいいます。
- その年12月31日現在の年齢が16歳以上であること
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)、または里子、もしくは養護受託老人
- 納税者本人と同一生計であること
- 年間の「合計所得金額」が38万円以下(令和2年分以降は48万円以下)であること
(給与のみの場合は給与収入が103万円以下であること) - 青色事業専従者としてその年に一度も給与の支払を受けていないこと、または事業専従者でないこと
親族が給与所得者であり、かつ副業をしている場合の「合計所得金額」と扶養親族の判定
扶養親族の判定の一つに、その親族の「合計所得金額」が38万円以下であることの要件があるのですが、
その親族が、会社員、パート、アルバイトなどの給与所得者であれば、年間の給与収入が103万円以下であるかどうかで判定することができます。
給与以外に収入がない場合にはこの判定のみで終了となります。
しかし、その親族が給与所得者として給与収入を得ている一方で、副業をしている場合には、次のようになります。
副業があるケース1
・給与収入:100万円
・副業収入:80万円 副業経費:30万円
以上の場合
合計所得金額は、
・給与収入 100万円 マイナス 給与所得控除 65万円 = 35万円
・副業収入 80万円 マイナス 副業経費 30万円 = 50万円
計 35万円 プラス 50万円 で、85万円となります。
結果、
合計所得金額が38万円超となっているので、扶養控除の対象となる扶養親族に該当しません。
副業があるケース2
・給与収入:70万円
・副業収入:80万円 副業経費:50万円
以上の場合
合計所得金額は、
・給与収入 70万円 マイナス 給与所得控除 65万円 = 5万円
・副業収入 80万円 マイナス 副業経費 50万円 = 30万円
計 5万円 プラス 30万円 で、35万円となります。
結果、
合計所得金額が38万円以下となっているので、扶養控除の対象となる扶養親族に該当します。
副業があるケース3
・給与収入:100万円
・副業収入:80万円 副業経費:70万円
以上の場合
合計所得金額は、
・給与収入 100万円 マイナス 給与所得控除 65万円 = 35万円
・副業収入 80万円 マイナス 副業経費 70万円 = 10万円
計 35万円 プラス 10万円 で、45万円となります。
結果、
合計所得金額が38万円超となっているので、扶養控除の対象となる扶養親族に該当しません。
(後ほど覆しますが。)
親族が給与所得者であり、かつ副業をしている場合の「合計所得金額」と扶養親族の判定は、以上のとおりとなっています。
ここからは、私見(考察)ですが、
ここで給与所得者の確定申告義務の規定を思い出します。
給与所得者の確定申告義務(一部)
ほとんどの給与所得者は、給与の支払者である会社側がおこなう年末調整によって所得税額が確定し、1年間分の所得税の精算が済まされるので、確定申告をする必要はないのですが、
給与所得者の確定申告義務の規定では、「1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得および退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人」は確定申告をしなければならないこととなっています。
裏を返せば、「1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得および退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円以下の人」は確定申告をする必要がありません。
先ほどの、ケース1も、ケース2も、副業の所得が20万円を超えているので確定申告義務があります。
しかし、ケース3では、副業の所得が20万円以下なので確定申告義務はありません。
ケース3では、
確定申告すれば、
合計所得金額が38万円超となって扶養親族に該当しません。
しかし、
確定申告しなければ、
合計所得金額が38万円以下となって扶養親族に該当します。
となってしまいます。
確定申告義務はありませんので、
- 扶養親族に入れたければ、わざわざ確定申告をしない。
- 扶養親族から外れてもいいのなら、仕方ないけど確定申告をする。
と選択することができるように見えます。
本当にこれでよいのでしょうか。。。
合計所得金額の規定を見てみましょう。
合計所得金額とは、
合計所得金額とは、純損失、雑損失、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失、特定居住用財産の譲渡損失、上場株式等に係る譲渡損失、特定投資株式に係る譲渡損失及び先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除を適用する前の総所得金額、特別控除前の分離課税の長(短)期譲渡所得の金額、株式等に係る譲渡所得等の金額、上場株式等の配当所得等(上場株式等に係る譲渡損失との損益通算後の金額)、先物取引に係る雑所得等の金額、山林所得金額、退職所得金額の合計額をいいます。
このとおり、特に申告義務については触れていません。
最後に、私見ですが、
ケース3については、
本来的には、
確定申告義務のない副業の所得も含めて扶養親族の判定をするのが正しいと思われます。
しかし実務的には、
確定申告しなければ扶養親族になる。
確定申告すれば扶養親族から外れる。
となってしまっていると考えます。
だから、扶養親族に入れたければ、確定申告をしないのが正解だと思います。
これは逆に、
副業が赤字である場合を考えてみれば腑に落ちると思います。
副業(あまり考えられないですが、仮に事業所得や不動産所得だったとして)が赤字の場合、
確定申告すれば損益通算されて扶養親族になり、
確定申告しなければ扶養親族にならない、
ケースがあるからです。
「確定申告していないのにわざわざ税務署側が赤字の副業まで考慮して扶養控除の判断をしてくれることなんてない」ということを考えれば、一応の整合性が取れますよね。
ご覧いただきまして誠にありがとうございました。