2か所以上の会社から給与をもらっている人の源泉徴収のルール
はじめに
以前は禁止していた副業を最近になって認める方針に転換した会社も出てきていることから、2か所以上の会社から給与をもらっている人も増えていらっしゃることと思われます。
また、役員の方については、グループ会社以外でも複数の会社の役員を兼務したりしている人もいらっしゃると思われます。
このように、2か所以上の会社から源泉徴収をもらっている人について、源泉徴収する場合にどのような点に注意すればよいのかを見てみましょう。
2か所以上の会社から給与をもらっている人の源泉徴収のルール
「主たる給与」か、「従たる給与」か
会社側としては、2か所以上の会社から給与をもらっている人の源泉徴収をする場合には、その人に支払う給与が、「主たる給与」になるのか、「従たる給与」になるかを、まず確認をすることが必要となります。
「主たる給与」とは
「主たる給与」とは、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人に支払う給与をいいます。
「従たる給与」とは
「従たる給与」とは、主たる給与の支払者以外の支払者が支払う給与をいいます。
「従たる給与についての扶養控除等申告書」
「従たる給与についての扶養控除等申告書」とは、2か所以上の会社から給与の支払を受ける人で、「主たる給与等の支払者」から支給される給与だけでは人的な所得控除が控除しきれないと見込まれる人が、「従たる給与の支払者」から支給される給与から源泉控除対象配偶者(※)について控除を受ける配偶者控除とか扶養控除を受けるために提出する書類です。
(※)「源泉控除対象配偶者」とは、その人(合計所得金額が900万円以下)と生計が同じである配偶者(青色事業専従者、事業専従者を除く)で、令和元年分の所得の見積額が85万円(令和2年以後は95万円)以下の人のことをいいます。
源泉徴収税額表の「甲欄」または「乙欄」で源泉徴収税額を求める
源泉徴収税額表の「甲欄」または「乙欄」で源泉徴収税額を求めます。
この場合、
- 主たる給与の場合は、税額表の「甲欄」にて求めます。
- 従たる給与の場合は、税額表の「乙欄」にて求めます。
なお、
「従たる給与についての扶養控除等申告書」を提出している人については、
「乙欄」で求めた源泉徴収税額から次の金額を控除します。
- 月額表を使う場合は、控除対象扶養親族など一人につき 1,610円
- 日額表を使う場合は、控除対象扶養親族など一人につき 50円
従たる給与の源泉徴収税額は確定申告により精算
原則として、従たる給与については年末調整をすることができませんので、本人が確定申告を行って所得税の精算を行うことが必要となります。
まとめ
「主たる給与」か「従たる給与」かで源泉徴収税額は異なります。
- 主たる給与の場合・・・税額表の「甲欄」で源泉徴収税額を計算する。
- 従たる給与の場合・・・税額表の「乙欄」で源泉徴収税額を計算する。
なお、従たる給与の会社に「従たる給与についての扶養控除等申告書」を提出している人については、「乙欄」で求めた源泉徴収税額から上記の一定額を控除します。
従たる給与については年末調整をすることができませんので、所得税の精算には確定申告が必要となります。