企業がマスクを取引先等に無償で提供した場合の寄附金の取り扱い

企業がマスクを取引先等に無償で提供した場合

新型コロナウイルス感染症に関して、税制上の措置がいくつか公表されていますが、

その中の一つに、新型コロナウイルス感染症の拡大防止への取り組みとして、企業がその関係会社や子会社、下請け業者などの取引先等に対して、マスクや消毒液などを新型コロナウイルス感染防止のために無償で提供した場合の法人税法上の寄附金の取り扱いについて記載がありますので、ここにも記しておきます。

 

一般の寄附金は費用にできる金額に限度があるが、

仮に、無償提供が寄附金に該当すると判断されると、法人税の計算上一定の計算式により損金算入限度額が設けられて、その全額を費用として認められないという可能性が生じるのですが、

次のような場合には、マスク等の無償提供は寄附金とはならず、寄附金以外の費用として処理することが認められます。

 

これは、今般の新型コロナウイルス感染症に関してマスク等の需要が急激に増加したことにより、取引先等においてその調達が困難となっており、業務の遂行上著しい障害が生じている、または著しい障害が生じるおそれがあることを踏まえて公表されたものであります。

 

寄附金以外の費用に該当する場合

企業が行うマスク等の無償提供が、新型コロナウイル感染症に関する対応として、緊急かつ感染症の流行が終息するまでの間に限って行われるものであり、次の条件を満たすものであれば、その企業の事業遂行上、必要な経費と考えられるので、そのマスク等を提供するための費用(マスク等の購入費用、送料等)は、寄附金以外の費用に該当します。すなわちその費用の全額が必要な経費として損金の額に算入されます。

 

条件①

提供先である取引先等において、マスク等が不足していることにより業務の遂行上、著しい障害が生じている、または今後生じるおそれがあること

 

条件②

その取引先等が業務を維持できない場合には、提供元である企業において操業が維持できない、営業に支障が生じる、仕入れ等が困難になるといった、提供元である企業の業務においても直接的または間接的な影響が生じること

 

寄附金に該当する場合

仮に上記の条件①②を満たすものであったとしても、

提供先である取引先等において、その無償提供を受けたマスク等を転売しているという事実がある場合には、提供元である企業において、事業の遂行上必要な経費とは認められませんので、そのマスク等を提供するための費用(マスク等の購入費用、送料等)は、寄附金に該当することとなります。

 

 

新型コロナウイル感染症にかかわらず、

今回は新型コロナウイル感染症の影響があるため、あえてマスク等の提供についての法人税法上の寄附金の取り扱いが公表されていますが、

新型コロナウイル感染症にかかわらず、法人税法における寄附金の判断については、その本質が何であるかを、本件と同じように考えるとよいと思います。

 

 

ご覧いただきまして誠にありがとうございました。

※この記事は、作成時点の法令や経験をもとに概要を記載したもので、記載内容に相違が生じる可能性があります。

また、記事中の特に意見部分については記載者の見解ですので、実際の適用においては必ず個別具体的な内容をお近くの税理士や税務署などにご確認くださいますようお願い申し上げます。