法人が絵画などの美術品等を取得したときの減価償却資産の判定
法人が絵画などの美術品等を取得したときの減価償却資産の判定
立派な会社を訪問したときに、その会社の応接室や、受付、ロビーなどで、美術品が飾られているのを見かけるときがあります。
今回は、会社の応接室や受付などの装飾用として絵画などの美術品等を購入し設置したときに、これが減価償却資産に該当するのか、または減価償却資産に該当しないのかについて、見てみましょう。
時の経過によりその価値の減少しない美術品等は減価償却資産に該当しない
「時の経過によりその価値の減少しない資産」は減価償却資産に該当しないこととなっていますが、
次のような美術品等については、「時の経過によりその価値の減少しない資産」とされています。
古美術品、古文書、出土品、遺物等
古美術品、古文書、出土品、遺物等のように歴史的価値または希少価値を有しており、代替性のないものについては、「時の経過によりその価値の減少しない資産」とされています。
1点100万円以上であるもの
上記以外の美術品等で、取得価額が1点100万円以上であるもの(ただし、時の経過によりその価値の減少することが明らかなもの(※)を除きます。)は、「時の経過によりその価値の減少しない資産」とされています。
1点100万円以上とする金額基準です。
ただし、所得価額が1点100万円未満であったとしても、高価な素材が大部分を占める小型の工芸品のように、素材の経済的価値が取得価額の大部分を占めるようなものは、
「時の経過によりその価値の減少しない資産」とされています。
(※)時の経過によりその価値の減少することが明らかなものとは
たとえ取得価額が1点100万円以上であるものであっても、減価償却資産に該当するものとして、時の経過によりその価値の減少することが明らかなものがあります。
時の経過によりその価値の減少することが明らかなものには、たとえば会館のロビーやホールのような不特定多数の者が利用する場所の装飾用や展示用(有料で展示するものを除く)として法人が取得するもののうち、その場所から移設させることが困難であり、他の用途に使用することができないことが明らかであるもの、かつ、もしも他の用途に使用するとした場合にその設置状況や使用状況からして美術品としての市場価値が見込まれないようなものが含まれています。
これまでに訪れたことのある会館やホールを思い出してみれば、そのような美術品等が設置されていただろうことが思い出されるのではないでしょうか。
(参考)平成26年12月の通達改正
平成26年12月の通達改正により、上記のとおり、金額基準として、1点あたり100万円以上の美術品等は、基本的に「時の経過によりその価値の減少しない資産」とされることとなりましたが、この通達改正前までは、1点あたり20万円以上(絵画については、号あたり2万円以上)という基準が設けられていました。
しかし、当初本通達が制定されて以降、年数が経ち、、美術品等が多様化したことや経済状況が変化したことなどもあったので、意見公募手続きを実施し、専門家の意見等を踏まえたうえで、通達の改正が行われました。
その通達の改正の結果、金額基準については、絵画に限らず1点あたり100万円以上が「時の経過によりその価値の減少しない資産」とされることとなりました。
現在の通達は、平成27年1月1日以降に取得する美術品等について適用されるものですので、それ以前に取得した美術品については、旧通達の1点20万円の基準が適用されることとなっております。
ご覧いただきまして誠にありがとうございました。
※この記事は、作成時点の法令や経験をもとに概要を記載したもので、記載内容に相違が生じる可能性があります。
また、記事中の特に意見部分については記載者の見解ですので、実際の適用においては必ず個別具体的な内容をお近くの税理士や税務署などにご確認くださいますようお願い申し上げます。