決算時の人件費の未払計上、洗い替え
決算時における人件費の未払計上
会社が従業員の人件費を支払うタイミングといえば、
給料のうち基本給部分や基本手当て部分については、当月分をその月の20日に締めて20日払いにしているとか、あるいは15日に締めて25日払いにしているとかのように、それぞれ一定の基準に従っており、
また、変動的要素の強い残業代については、当月の締め日までの分を翌月の給与支払い日に支給していることが多いのではないでしょうか。
このように、当月の末日に締めて同日支払われる給与でない場合には、
決算時において、基本的には決算日の直前の締め日から決算日までの間の未払の人件費を日割り計算で未払費用に計上することとなります。
今回は、決算時における人件費の未払金計上について、見てみましょう。
決算時における人件費の未払計上
前提として、
たとえば、給与の計算を、毎月20日締め当月20日払い、残業代は毎月末日締め翌月20日払いとしている会社を例にとってみます。
対象月の給与:300万円、残業代は30万円、
1ヶ月は30日としておきます。
<決算時の仕訳>
給与:
締め日以降、年度末までの給与の未払計上を行います。
ここでは、締め日から年度末までの10日分を日数按分した金額を未払費用に計上します。
300万円 × 10日分/1ヶ月分 = 100万円
(仕訳)給与100万円 / 未払費用100万円
残業代:
残業代についても未払費用に計上します。
前提により、1か月分全額が未払計上となります。
30万円 × 30日分/1ヶ月分 = 30万円
(仕訳)給与30万円 / 未払費用30万円
ちなみに、給与(基本給)が月末日締めで当月中に支払われることになっている会社の多くは、この残業代のみが未払費用に計上されています。
前期の未払計上額との洗い替え
たとえば大企業など、多くの仕訳作成が自動化された会計システムを整備しているような会社であれば、毎月の人件費の未払計上分を翌月の支払い際に未払を取り崩して支払う仕訳を作成し、そのうえで、当月発生した人件費の未払計上分を新たに発生させるなどして、毎月毎月、未払い分をロールして仕訳している会社もありますが、
多くの中小企業では、決算時に前年度の未払計上額を当年度の未払計上額に洗い替える処理をしていることと思われます。
この洗い替え処理は、次のとおり行います。
たとえば、給与の計算を、毎月20日締め当月20日払い、残業代は毎月末日締め翌月20日払いとしている会社を例にとってみます。
前年度の対象月の給与:270万円、残業代は27万円、
当年度の対象月の給与:300万円、残業代は30万円とします。
1ヶ月は30日としておきます。
<決算時の洗い替え仕訳>
給与:
前年度の締め日から前年度末までの10日分を日数按分した金額が未払費用に計上されており、
その未払費用を戻し入れします。
270万円 × 10日分/1ヶ月分 = 90万円
(前期戻入仕訳)未払費用90万円 / 給与90万円
そのうえで、当年度の締め日から当年度末までの10日分を日数按分した金額を未払費用に計上します。
300万円 × 10日分/1ヶ月分 = 100万円
(当期計上仕訳)給与100万円 / 未払費用100万円
(残業代も同様の洗い替え仕訳科目になるので、ここでは省略しておきます。)
注意点
注意点として、
ここで新たに発生した(当期計上仕訳)の未払費用は、翌月の給与支払の際に取り崩しをしない、ということです。
洗い替えの場合、翌年度末まで戻し入れは行いません。
翌月の給与支払については、
たんたんと、
(給与支払仕訳)給与300万円 / 現金預金300万円
としていきます。
本当は、
当月1日から締め日の20日までの分として、
(給与支払仕訳)
給与200万円 / 現金預金200万円
未払費用100万円 /現金預金100万円
としたいところを、
上記のように
(給与支払仕訳)給与300万円 / 現金預金300万円
と仕訳するのです。
でないと、洗い替えにする場合、年間トータルでの費用計上額が合わなくなってしまいます。
余談ですが、
洗い替えをしないと、月次推移のブレが大きくなってしまいます。
決算時の洗い替え処理をする方法を採用することにより、年度初めと年度末における月次推移のブレを少なくすることが可能となります。
これは、洗い替えを行うことのメリットといえるでしょう。
役員報酬の場合
役員報酬については、上記のような未払費用の処理を行いません。
役員は会社との間で、委任契約を締結しています。(従業員のように雇用契約ではありません。)
役員報酬は委任契約に基づく報酬を、たとえば定期同額給与などで支払っているので、日数割りをするような考え方ではないのです。
決算整理で人件費の未払計上仕訳を作成する際に、人件費データを給与システムなどから抽出して加工したりしますが、
そのデータに役員のデータが含まれていないかどうか、気を付けるようにしましょう。
ご覧いただきまして誠にありがとうございました。
※この記事は、作成時点の法令や経験をもとに概要を記載したもので、記載内容に相違が生じる可能性があります。
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