個人事業者が取引先に資金を貸し付けた場合の所得

個人事業者が取引先に資金を貸し付けた場合の所得

事業者が資金を調達するとしたら、通常であれば都銀や地銀などの金融機関であるとか、日本政策金融公庫のような政府系の金融機関からの資金調達になることが多いのですが、

何らかの事情により、事業者間においても、取引先に対して資金を貸し付けるような場合が実際にあります。

昔からの個人的な付き合いが長いこととか、事業上のつながりが濃いといったことにより、相手先との間で信頼関係が成立していることのほか、取引上の要請があること、かつ利害関係が一致しているようなケースが考えられます。

 

今回は、たとえば、商品販売業を営む個人事業者が、下請けの取引先に対して商品の増産要請を行ったことに基づき、その取引先が新たな製造設備を導入するための資金を一般的な金利で貸し付けた場合の貸付金の利子がどのような所得になるのかについて、見てみましょう。

 

 

事業に付随する収入は事業所得の総収入金額に算入

事業所得の総収入金額には、商品販売による売上収入のように本来の事業活動から生じる収入のほかに、事業の遂行に付随して生ずる収入についても、事業所得の金額の計算上総収入金額に算入することとされています。

 

事業の遂行に付随して生ずる収入の例

事業所得を生ずべき事業の遂行に付随して生じた次に掲げるような収入については、事業所得の金額の計算上総収入金額に算入することとされています。

 

  • 事業の遂行上取引先または使用人に対して貸し付けた貸付金の利子
  • 事業用資産の購入に伴って景品として受ける金品
  • 新聞販売店における折込広告収入
  • 浴場業、飲食業等における広告の掲示による収入
  • 医師または歯科医師が、休日、祭日または夜間に診療等を行うことにより地方公共団体等から支払を受ける一定の委嘱料等(給与等に該当するものは除きます。)
  • 事業用固定資産に係る固定資産税を納期前に納付することにより交付を受ける報奨金

 

 

事業所得かどうかの判定

金銭の貸付けによる所得が事業所得に該当するかどうかは、もちろん、貸付金額、利率、貸付けの相手方、担保権の設定の有無、貸付資金の調達方法などの諸般の状況を総合勘案して判定することとされていますが、

冒頭の例のような、商品販売業を営む個人事業者が下請けの取引先に対して商品の製造設備を導入するための資金を貸し付けた場合の貸付金の利子については、

基本的には、上記の「事業の遂行に付随して生ずる収入の例」の「事業の遂行上取引先に対して貸し付けた貸付金の利子」に該当することとされており、

事業所得の計算上総収入金額に算入することになります。

 

 

ご覧いただきまして誠にありがとうございました。

※この記事は、作成時点の法令や経験をもとに概要を記載したもので、記載内容に相違が生じる可能性があります。

また、記事中の特に意見部分については記載者の見解ですので、実際の適用においては必ず個別具体的な内容をお近くの税理士や税務署などにご確認くださいますようお願い申し上げます。