個人事業者が少額の減価償却資産を売却したときの所得

個人事業者が少額の減価償却資産を売却したときの所得

個人事業者が、たとえば、不要となったパソコンなどのOA機器や、デスク、ミニバイクなどのような事業用の減価償却資産を売却したときに、

その譲渡による所得が譲渡所得として課税されるのか、それとも事業所得として課税されるのかについて、見てみましょう。

 

 

基本的に資産の売却は譲渡所得(土地や建物、株式等以外)

資産を売ったときの所得は、基本的には譲渡所得となります。

この譲渡所得は、給与所得や事業所得などの所得と合わせて総合課税の対象となっています。(土地建物や株式等を売った場合を除きます。)

そして、この総合課税の譲渡所得は、取得したときから売ったときまでの所有期間によって、「長期」と「短期」の二つに分類されています。

 

  1. 長期譲渡所得:所有期間が5年を超えている場合
  2. 短期譲渡所得:所有期間が5年以内の場合(自己取得の著作権など一定のものは除きます。)

 

譲渡所得の金額の計算

譲渡所得の金額は、次の計算式にて計算されます。

<計算式>

譲渡所得の金額 = 譲渡価額 - (取得費 + 譲渡費用)-最大50万円

 

そして、総合課税の対象となる金額は、「長期」と「短期」によって次のように異なります。

  1. 長期譲渡所得:その2分の1
  2. 短期譲渡所得:その全額

 

年間合わせて50万円までは税金がかからないというものです。

 

「棚卸資産に準ずる資産」の売却は、事業所得

上記のように、資産を売ったときの所得は、基本的には譲渡所得となりますが、

次のような場合には、

それらの資産の売却は、譲渡所得の起因とされない「棚卸資産に準ずる資産」の売却とされており、

事業所得として(事業でなければ雑所得として)課税されることとなっています。

 

  • 「10万円未満、または使用可能期間が1年未満」の少額の減価償却資産の取得価額の全額を事業の用に供した年分の必要経費に算入している場合
  • 「10万円以上20万円未満の一括償却資産」としてその取得価額の合計額を事業の用に供した年以後3年間の各年の費用の額とする方法を選択している場合

 

 

もともと少額のものとして、金額もそれほど大きなものではないと思われますが、売却処分のときには計上漏れのないようにしましょう。

 

30万円未満の中小・青色特例の場合は、譲渡所得

中小事業者に該当する青色申告者が、取得価額30万円未満の減価償却資産を取得して事業の用に供した場合には、その減価償却資産の取得価額相当額を事業の用に供した年分の必要経費に算入することができる特例があります。(1年間で合計300万円まで。)

 

この特例の適用を受けた資産の売却は、「棚卸資産に準ずる資産」の売却にはあたらないこととされており、その売却による所得は「譲渡所得」として課税されることとなっています。

 

 

譲渡所得にならない資産の譲渡(参考)

上記と一部重複しますが、次のような資産の譲渡については、譲渡所得とはならないこととなっています。

  • 事業用の商品などの棚卸資産の譲渡
  • 山林の譲渡
  • 使用可能期間が1年未満の減価償却資産の譲渡
  • 取得価額が10万円未満の減価償却資産(業務の性質上基本的に重要なものを除きます。)の譲渡
  • 一括償却資産の必要経費算入の規定の適用を受けた減価償却資産(業務の性質上基本的に重要なものを除きます。)の譲渡など

 

※「業務の性質上基本的に重要なもの」とは、製品の製造、農産物の生産、商品の販売、役務の提供など、その者の目的とする業務の遂行上直接必要な減価償却資産でその業務の遂行上欠くことのできないもの(ただし、反復継続して譲渡することがその業務の性質上通常であるものは除きます。)をいいます。

 

ご覧いただきまして誠にありがとうございました。

※この記事は、作成時点の法令や経験をもとに概要を記載したもので、記載内容に相違が生じる可能性があります。

また、記事中の特に意見部分については記載者の見解ですので、実際の適用においては必ず個別具体的な内容をお近くの税理士や税務署などにご確認くださいますようお願い申し上げます。