日本に帰国して居住者となった人の所得控除

日本に帰国して居住者となった人の所得控除

海外の支店に1年以上の予定で転勤などをすると、一般的には、日本国内に住所を有しない者と推定されて、所得税法上の非居住者となります。

その後、その人が日本に帰国(帰省などの一時的なものは含みません。)をすれば、所得税法上の居住者になるのですが、

その居住者に関して年末調整をする場合や、その居住者が確定申告をする場合には、所得控除において気にしておかなければならないことがあります。

今回は、帰国して年の中途から居住者になった人の所得控除について、見てみましょう。

 

 

居住者期間中の支払い額をもとに計算するもの

医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除の各所得控除の額は、

帰国後の居住者期間に支払った金額をもととして計算することになります。

 

医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除の各所得控除の額は、

「居住者」がその年に支払ったものが控除の対象となっていますので、

非居住者であった期間内に支払ったものや、非居住者であった期間内に給与等から控除された社会保険料は控除の対象にはなりません。

 

居住者期間内に支払われたものか、非居住者期間中に支払われたものか、その支払の時点で控除の対象になるかどうかを判定することとなります。

 

迷いがちな事例としては、

生命保険料などを年払いするような場合があります。

たとえ年払いとはいっても、上記のとおり、あくまでもその支払の時点が居住者であるかどうかで所得控除できるかどうかの判定を行いますので、

その生命保険料の支払い時点が居住者であれば、支払額の全額が控除の対象となります。

(ただし、前納保険料(前もって保険会社に預けておく保険料)の場合にはあん分計算をすることとなっていることから、非居住者期間内に支払期日が到来する部分については生命保険料控除等の対象とはなりません。)

 

医療費も同じように考えます。

帰国後にまとめて請求があったことなどにより、居住者期間内に医療費の支払を一括してすることとなったような場合には、

その医療費は医療費控除の対象となります。

 

その年の12月31日の現況により計算するもの

配偶者控除、扶養控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除の各所得控除の額は、

その年の12月31日の現況により判定したところで計算することとなります。

 

ですので、年の途中に帰国をして居住者となり、そのまま12月31日を迎えたような場合には、

いくら居住者になったのが年の中途からであるとはいっても、

その年の12月31日の現況により、配偶者控除、扶養控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除の各所得控除それぞれの要件に従って、

それぞれの控除の適用を受けることとなります。

 

 

ご覧いただきまして誠にありがとうございました。

※この記事は、作成時点の法令や記載者の経験等をもとに概要を記載したものですので、記載内容に相違が生じる可能性があります。

また、記事中の特に意見部分については記載者の見解ですので、実際の適用においては必ず個別具体的な内容をお近くの税理士や税務署などにご確認くださいますようお願い申し上げます。