会社の従業員が講師をして、講演料を受け取るときの源泉徴収の有無
会社の従業員が講師をして、講演料を受け取るときの源泉徴収
会社にはそれぞれの部署に高度な専門性を持った人材がいたり、博士などの専門家がいたりすることがあると思います。
なかには、同業者の主催する講演会や、特定の職種で働く人たちが集まる会議などの場で、自社の従業員が講師として講演をすることを依頼されることがあるかもしれません。
このように、自社の従業員が講演会で講演をして、その報酬・謝礼として講演料が会社の銀行口座に振込まれるときに、
その講演料から所得税および復興特別所得税(所得税等)が源泉徴収されているような計算書をときどき見かけることがあるのですが、
果たしてこの源泉徴収は正しい処理なのでしょうか。
今回は、会社の従業員が講演会で講演を行って、その講演料が会社に支払われるときの源泉徴収の注意点について、見てみましょう。
講演料等を支払ったときの源泉徴収義務
大学教授や専門家などに講演料などの報酬を支払うときは、報酬・料金等として所得税および復興特別所得税を源泉徴収しなければならないこととなっています。
そして、講演料のほかに、源泉徴収の対象となる報酬・料金等に含まれるものとして、次のことに注意する必要があります。
- 謝金、取材費、調査費、車代などの名目で支払をする場合がありますが、これらの実態が原稿料や講演料と同じ場合には、源泉徴収の対象となります。
- 旅費や宿泊費などの支払も、原則的には報酬・料金等に含まれます。(通常必要な範囲の金額で、報酬・料金等の支払者が直接、ホテルや旅行会社等に旅費や宿泊費などを支払った場合は、報酬・料金等に含めなくてもよいことになっています。)
- 報酬・料金等の額の中に消費税等の額が含まれている場合は、原則として消費税等の額を含めた金額を源泉徴収の対象とします。しかし、請求書等において報酬・料金等の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、その報酬・料金等の額のみを源泉徴収の対象とする金額としても差し支えないこととなっています。
ポイントは、相手が「個人」であるか、または「法人」であるか
講演料を支払う際には、上記のような源泉徴収の取り扱いがあるのですが、この源泉徴収の前提としては、講演料として報酬を支払う際のその相手が「個人」となっていることです。
相手が「個人」であれば、その講演料を支払う際に所得税等を源泉徴収しなければならないこととなっているのですが、じつは、相手が「法人」であるならば、源泉徴収はしないこととなっています。
事前確認が重要
講演料として報酬を支払う際に源泉徴収が必要かどうかの判断するためには、講演料を支払う相手が「個人」であるのか、または「法人」であるのかを確認しなければなりません。
そして、支払いを受ける側も、受け取る講演料が「個人」として受け取るのか、または「法人」とし受け取るのかを、きっちりと相手に伝えなければなりません。
一度金銭の授受が済んでしまうと、その修正のためのやり取りが煩雑になってしまうので、お互いに事前確認することが大切といえるでしょう。
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※この記事は、作成時点の法令や経験をもとに概要を記載したもので、記載内容に相違が生じる可能性があります。
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