役員待遇並みの部長昇格者に対する退職金の打ち切り支給
役員待遇並みの部長昇格者に対する退職金の打ち切り支給
たとえば、部内の取りまとめ役として部長に昇格した従業員に対して、社内的には役員と同等の処遇を行うこととしたことにより、
部長に昇格する日をもって、退職金支給規定にもとづいて退職金の打ち切り支給をしたとします。
このような場合に、この退職金の支給について税務上何ら問題がないかについて、見てみましょう。
部長への昇格は、あくまでも人事異動
部長という立場になって部内の最高責任者になったことから、社内的にはその地位が役員と同じようになったと考える会社もなかにはあるかもしれませんが、
部長という立場は、あくまでも会社の機構上は使用人としての職制上の地位をいいます。
冒頭の「部内の取りまとめ役として」ということからも、社長などの役員の指揮監督のもとに仕事をおこなう立場には変わりなく、
株主総会において役員に選任されたことでもないことから、部長への昇進をもって会社の経営に従事していく役職になったとはまず考えられません。
このことから、部長への昇格は、給料がたとえ役員待遇になったとしても、人事異動があったに過ぎず、使用人としての地位に変動があったわけではないとされます。
したがって、部長に昇格した日をもって退職金支給規定にもとづいて退職金を支給することとしたとしても、
その退職金は退職金としては取り扱われません。
このような場合には、それは退職金ではなく、臨時的な「賞与」として取り扱われることとなります。
役員就任は雇用関係の終了
使用人が役員となった場合のように、実際には会社を退職したというわけではなくても、実態的には退職と同等であるとして、退職金が支給されることがあります。
退職金の打切り支給がこれに該当するのですが、このような場合に、退職金支給規定にもとづいて使用人期間にかかる退職金を支給したときには、それは「退職金」の支給として取り扱われることとなります。
先ほどは、「社内的には役員待遇とされる部長への昇格に伴う退職金は、退職金とはされずに、賞与扱いになる」と述べましたが、
役員待遇の部長就任と、実際の役員への就任の違いとして、
役員への就任については、従来の雇用関係が解消して、新たに委任関係が生じたことに着目しているのです。
したがって、実際には会社を退職するわけではなくても、役員への就任ということであるならば、雇用契約が終了したという事実上の退職があったと考えられることから、
使用人であった期間にかかる退職金の打切り支給が認められています。
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※この記事は、作成時点の法令や記載者の経験等をもとに概要を記載したものですので、記載内容に相違が生じる可能性があります。
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