消費税の旧税率8%と新税率10%で計算した差額だけが請求されたときの仕訳例
消費税率の差部分だけが請求される場面がある
年度はじめの頃とか、1年ごとの契約更新のタイミングなどに、1年分の保守料金などを一括して請求を受けていた場合には、
支払時にその料金の全額を消費税の旧税率である8%で処理していることがあります。
請求書がそのようにして送られてきますし、消費税率が10%にアップすることについてのシステム対応がまだできていない頃の支払いだから、仕方なくそのようになってしまっているケースがあると思います。
そして、令和元年10月1日からの消費税率が軽減8%適用の取引などを除いて原則10%の新税率に移行したことによって、
10月以降の期間に対応する保守料金などが新税率の10%で再計算されて請求しなおされることがあります。
このような場合には、一旦支払った保守料金のうち、消費税率が8%で決済されていた10月以降の部分が現金で戻入されて、改めて10%で請求されるということはまずもってありません。
10月以降の部分の本体料金に乗じた消費税率の差額部分(旧8%と新10%で計算した差額部分)だけがポツンと請求されるケースが実務上はほとんどでしょう。
このような請求書が届いて支払いをした場合の経理仕訳はどのようにすれば良いのかを見てみましょう。
消費税の旧税率8%と新税率10%の差額だけが請求されたときの仕訳例
消費税の旧税率8%と新税率10%の差額だけが請求されたときの仕訳は、課税事業者にあっては本則課税を適用している事業者と簡易課税を適用している事業者によって、また消費税の課税事業者に該当せず免税事業者であるかどうかによって、仕訳が異なることがあります。
事例を挙げてみますので、消費税の差額だけが請求されたときの仕訳例を、①消費税の課税事業者(本則課税)、②課税事業者(簡易課税)③免税事業者の場合のそれぞれについてみてみたいと思います。
<事例>
(金額:円)
2019年4月
保守料金 月額 100,000
消費税は旧税率8%で1年間分の請求があり、一括して支払った。
100,000×12ヶ月分=1,200,000
1,200,000×1.08=1,296,000
一括して支払った際の仕訳(例)
保守費 1,296,000 / 現金預金 1,296,000
※勘定科目は会社や事務所でお使いの別のもので構いません。
その後
2019年10月以降の期間に対応する部分が新税率の10%で再計算され、消費税の差額部分を請求どおりに支払った。
100,000×6か月分=600,000
600,000×1.10=660,000
600,000×1.08=648,000
消費税の差額部分:660,000−648,000=12,000 ・・・請求通り支払った金額
※税込みで差引計算していますが、税だけ抜き出して計算しても同じ結果となります。
課税事業者(本則課税)の仕訳例
(金額:円)
本則課税の場合には、次のような仕訳をすることが、消費税の確定申告書を作成する際の仕入税額の割戻し計算に有効と思われます。
保守費 -648,000 / 現金預金 -648,000
保守費 660,000 / 現金預金 660,000
※仕訳は現金預金のような貸借科目は1つにまとめてもらったりしても構いません。
※いったん2019年4月の保守費の総額を戻して、新たに旧8%部分と新10%部分とを分けて計上しても構いません。
いずれにしても、割戻し計算をする際に、旧8%税率と新10%税率とを区分して抽出できれば、申告書作成の際の仕入税額の計算がやり易いといえます。
課税事業者(簡易課税)の仕訳例
(金額:円)
簡易課税を選択している事業者であったとしても、上記の本則課税の仕訳をすれば良いのですが、
課税売上高の預かった消費税額から納付すべき消費税額を計算する簡易課税にあっては、次のような仕訳でも差し支えないと考えます。
保守費 12,000 / 現金預金 12,000
免税事業者の仕訳例
(金額:円)
免税事業者であったとしても、上記の本則課税の仕訳をすれば良いのですが、
消費税の確定申告がない免税事業者においては、次のような仕訳でも差し支えないと考えます。
保守費 12,000 / 現金預金 12,000
いかがでしょうか。
ご覧いただきまして誠にありがとうございました。