借上げ社宅の賃借料と社宅使用料収入を相殺表示する場合の注意点

借上げ社宅の賃借料と社宅使用料収入を相殺表示する場合

従業員のために社宅を用意している会社は、まず会社が従業員のために会社名義で住宅を借り上げ、そしてそれを従業員に一定の安価な賃料で貸付を行うことがあります。

 

消費税においては、住宅の賃借料も、従業員に対する住宅の貸付による社宅使用料収入もどちらも非課税取引となっていますが、

これを会社の経理上相殺して表示した場合に、課税売上割合の計算上間違いが生じやすいところがあるので、今回はその点について見てみましょう。

 

 

総額で課税売上割合を計算する

課税売上割合の計算式は次のとおりとなっています。

<計算式>

課税売上割合 = 課税期間中の課税売上高(税抜き) ÷ 課税期間中の総売上高(税抜き)

 

課税売上割合を計算するうえで細かなルールは幾つもあるのですが、

今回は、借上げ社宅の賃借料と社宅使用料収入を相殺表示した場合の注意点として「取引は総額により課税売上割合を計算する(=相殺しない)」ことについて、見てみます。

 

相殺表示した場合の注意点

消費税額の計算においては、取引を総額表示で考えることが必要です。

上記<計算式>の分母「課税期間中の総売上高」は、課税売上高と非課税売上高の合計となりますので、借上げ社宅の賃借料と社宅使用料収入を相殺表示した場合の金額をそのまま採用すれば、分母の非課税売上高がその分少なくなってしまいます。

分母の非課税売上高が少なくなると、課税売上割合は本来求められている割合よりも高い割合になってしまう恐れがあります。

 

そこで、仮に、会社の経理上取引を相殺表示にしていたとしても、課税売上割合を計算するうえでは相殺前の総額表示で処理するように注意しましょう。

 

 

課税売上割合の計算違いで影響するところ

本則で消費税の納税額を計算する場合には、課税期間中の課税売上高が5億円超、または課税売上割合が95%未満の場合には、課税仕入れ等に係る消費税額の全額を控除するのではなく、課税売上げに対応する部分のみを控除することとなります。

つまり、課税期間中の課税売上高が5億円超、または課税売上割合が95%未満の場合には、課税売上割合が変われば納付する消費税額に影響が生じることとなります。

 

そもそも課税売上割合が95%以上になるのか、それとも95%未満になるのかの、判定の段階で課税売上割合を正しく計算する必要がありますし、

たとえ課税売上割合が95%以上であったとしても、課税期間中の課税売上高が5億円を超えるような場合には、個別対応方式を採用しても一括比例配分方式を採用してもどちらの場合でも課税売上割合の違いによって納付税額に影響を与えることとなってきます。

 

このように、本則で消費税の納税額を計算するうえで課税売上割合の計算は重要ですので、借り上げ社宅の取引のような相殺表示しがちな取引にはご注意ください。

 

 

ご覧いただきまして誠にありがとうございました。

※この記事は、作成時点の法令や経験をもとに概要を記載したもので、記載内容に相違が生じる可能性があります。

また、記事中の特に意見部分については記載者の見解ですので、実際の適用においては必ず個別具体的な内容をお近くの税理士や税務署などにご確認くださいますようお願い申し上げます。