土地を譲渡したときの譲渡時期

土地を譲渡したときの譲渡時期をいつにすればいよいのか

たとえば、3月決算である会社が、自社ビルの敷地を売却するときに、

今年度中(3月中)に売買契約書を締結して代金の一部を受領し、翌年度(4月)になってから所有権の移転登記が行われたうえで残金を受領したような場合に、

土地の譲渡における収益をどちらの期に計上すればよいのかについて、見てみましょう。

 

 

不動産の譲渡による収益は、原則引き渡しのあった日に計上

原則的には、不動産の譲渡による収益は、その「引き渡しのあった日」の属する事業年度の益金になるとされています。

また、その不動産が土地や建物など一定のものである場合において、会社がその譲渡にかかる契約の「効力が発生した日」の属する事業年度において益金に算入しているときは、その処理も認められています。

 

冒頭の例であれば、

原則としては、土地の引き渡しのあった4月に収益の計上を行うこととなりますが、

売買契約の効力の発生した3月において収益の計上を行うことも認められているということになります。

 

 

引き渡しのあった日

「引き渡しのあった日」は、冒頭の例では、その土地の所有権の移転登記が行われた日としているのですが、

実際には必ずしもその登記の日がいつなのかで「引き渡しのあった日」を判断するわけではなく、

登記の前から譲渡した相手方においてその土地の使用収益が開始できるようになっているような場合には、

その使用収益ができるようになった日が実質的に「引き渡しのあった日」となります。

 

たとえば、所有権の移転登記をする前から、譲渡の相手方がその土地の開発に着工しているような場合には、

移転登記されていなくても引き渡しが完了していると言えるでしょう。

 

 

引き渡しの日が明らかでないとき

仮に、譲渡する土地が棚卸資産であるような場合で、その引き渡し日が明らかでないようなときには、つぎのいずれか早い日に引き渡しがあったとすることができるとされています。

 

  1. その土地の販売代金の相当部分(おおむね50%以上)を受領するに至った日
  2. 所有権移転登記の申請(その登記の申請に必要な書類の相手方への交付を含む。)をした日

 

ただし、この「引き渡しの日が明らかでないとき」の取り扱いは、あくまでも棚卸資産である土地について認められている取り扱いとなっているので、

冒頭の例のように自社ビルの敷地を譲渡するような場合の判断に用いることはできません。

 

 

効力が発生した日

原則的には、不動産の譲渡による収益は、その「引き渡しのあった日」の属する事業年度の益金に算入するのですが、

「効力が発生した日」の属する事業年度の益金に算入することも認められるとお話ししました。

 

この「効力が発生した日」は、通常ならば、売買契約書を締結した日になると考えられます。

ただし、もしもその売買契約においてその効力に関する一定の条件が付されていると、効力が発生した日は売買契約書を締結した日と一致しなくなる可能性も考えられるので、注意が必要です。

 

たとえば、冒頭の例では、自社ビルの敷地の売却を例としていますが、

その自社ビルの敷地となっている土地の譲渡が、自社ビルの取り壊しを条件としているのであったならば、その契約の効力が発生した日は、売買契約書を締結した日ではなくて、自社ビルの取り壊し完了日になるといえるでしょう。

このような条件付きの契約の場合で、売買契約書を締結した日と、自社ビルの取り壊しが完了した日が決算期をまたいでいるようなときには、特に注意が必要といえます。

 

 

譲渡の相手方との計上日の不一致は

これまで、原則としては「引き渡しのあった日」に収益の計上を行うこととなりますが、

売買契約の「効力の発生した日」において収益の計上を行うことも認められています、とお話ししてきました。

 

このように原則と例外的な取り扱いがあると、

自社の譲渡日と、譲渡の相手方の取得日が不一致となるようなケースも発生するかもしれません。

 

このようなケースの場合にはどうすればよいのか迷うことがあるかもしれませんが、

結論としては、自社の譲渡日と、第三者である譲渡の相手方の取得日を必ずしも一致させる必要はないと考えます。

 

 

ご覧いただきまして誠にありがとうございました。

※この記事は、作成時点の法令や記載者の経験等をもとに概要を記載したものですので、記載内容に相違が生じる可能性があります。

また、記事中の特に意見部分については記載者の見解ですので、実際の適用においては必ず個別具体的な内容をお近くの税理士や税務署などにご確認くださいますようお願い申し上げます。