不動産所得が事業的規模と事業的規模でないときの主な違い

不動産所得が事業的規模と事業的規模でないときの主な違い

不動産などの貸付けによる所得は、不動産所得になりますが、その不動産貸付けが事業として行われているかどうかによって、所得金額の計算上の取扱いが異なる場合があります。

不動産の貸付けが事業として行われているかどうかについては、原則として社会通念上事業と称するに至る程度の規模で行われているかどうかによって、実質的に判断します。

ただし、不動産の貸し付けが建物の貸付けである場合については、形式的な基準としては、次のいずれかの基準に当てはまれば、原則として事業として行われているものとして取り扱われます。

  1. 貸間、アパート等については、貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上であること。
  2. 独立した家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。

 

今回は、不動産所得が事業的規模と事業的規模でないときの、所得税を計算するうえでの主な違いについて、見てみましょう。

 

 

事業的規模であるときと事業的規模でないときの違い

不動産の貸付けが事業的規模で行われている場合と事業的規模でない場合とでは、

所得金額を計算するうえで、主として次のように取り扱いが異なります。

 

資産損失の取り扱い

賃貸用固定資産の取壊、除却などの資産損失については、不動産の貸付けが事業的規模で行われている場合は、その全額を必要経費に算入します。

不動産の貸付けが事業的規模でない場合は、必要経費に算入される金額は、その年分の資産損失を差し引く前の不動産所得の金額が限度となります。

 

貸倒損失の取り扱い

賃貸料等の回収不能による貸倒損失については、不動産貸付けが事業的規模で行われている場合は、過年分にかかる回収不能額も一括して、その年の必要経費に算入します。

不動産の貸付けが事業的規模でない場合は、その回収不能に対応する所得がなかったものとして、収入金額に計上した年にさかのぼって所得金額を再度計算し直します。

 

専従者給与等の取り扱い

青色申告の青色事業専従者給与や、白色申告の事業専従者控除については、不動産貸付けが事業的規模で行われている場合のみ適用されます。

いずれも、家族の給与を必要経費にすることができる特例で、

青色事業専従者給与については、一定の要件の下に、実際に支払った給与の額を必要経費とすることができる特例、

白色申告の事業専従者控除については、一定の要件の下に、事業専従者が事業をしている人の配偶者であれば86万円、

配偶者でなければ専従者一人につき50万円を必要経費とすることができる特例となっています。

これらの特例は、不動産の貸付けが事業的規模でない場合には、これらの適用はありません。

 

青色申告特別控除の取り扱い

青色申告特別控除については、不動産貸付けが事業として行われている場合、一定の要件を満たせば、最高55万円(e-Taxで電子申告を行っていれば最高65万円)の控除を受けることができます。

不動産の貸付けが事業的規模でない場合には、最高10万円の控除となります。

 

 

ひとりごと

不動産賃貸事業が事業的規模であるときと事業的規模でないときの違いとして掲げたもののうち、

特に上記の事業専従者等の取り扱いについては大きなメリットだと考えられます。

どの程度の規模で不動産賃貸業を行うのかにもよりますが、たとえば1室、2室程度の賃貸ならともかく、

ある程度の規模や儲けになってきたにもかかわらず事業的規模として認められないくらいの線にいるのであれば、

自分だったらその事業を法人として営み、適用税率の引き下げを狙ったり所得の分散(もちろん実態に即して)を考えると思います。

もちろん、前提として、自分の本業が税理士業だから、本業と副業とは区分して管理しておきたいというのもあるのですがね。

 

 

 

ご覧いただきまして誠にありがとうございました。

※この記事は、作成時点の法令や記載者の経験等をもとに概要を記載したものですので、記載内容に相違が生じる可能性があります。

また、記事中の特に意見部分については記載者の見解ですので、実際の適用においては必ず個別具体的な内容をお近くの税理士や税務署などにご確認くださいますようお願い申し上げます。